第3節 地方交通


  大都市圏以外の地域の人口は, 〔2−2−17図〕のとおり30年代以降減少を続けてきたが,最近では増加に転じており地方における人口の定着化傾向がみられる。
  しかし,各地方圏についてみると, 〔2−2−29図〕のとおり人口20万人クラス以上の地方都市の発達が顕著となっている反面,依然として過疎地域にあっては人口の減少傾向が続いている。

  まず,人口が増加している地方都市では,最近, 〔2−2−30図〕のとおり地方圏において急速な普及を示している自家用乗用車を中心とする自動車の増加によって,大都市の場合と同様,道路交通の混雑をみせているところもあり,増加する輸送需要に対処するため,都市によっては鉄道等の大量公共輸送機関の整備を図ることが必要となっている。このため,すでに札幌市においては46年より地下鉄(12キロメートル)が営業を開始し,50年4月現在13キロメートルを建設中であるほか,福岡市においては地下鉄(15キロメートル)の建設が進められ,また北九州市においてはモノレールの建設が検討されている。さらに,50年8月には仙台市及び広島市について,地下鉄の整備を図るべきである旨の地方陸上交通審議会の答申が出されている。
  次に,過疎地域については,人口の減少によって輸送需要が稀薄になっていることに加えて,自家用車の普及によって,鉄道,バス等の輸送人員が減少している。すなわち,国鉄ローカル線,民鉄地方旅客鉄道について輸送人員の推移をみると, 〔2−2−31図〕のとおり定期,定期外旅客とも年々減少を続けており,また地方バスの輸送人員も減少している。

  このため,人件費等コストの大幅な上昇もあってこれら交通機関の多くは不採算化しており,運行回数の削減,路線の休廃止等サービスの悪化をもたらし,営業の維持すらも困難になっているものが多い 〔2−2−32表〕。また,離島航路や離島航空においても,輸送量の減退等から経営状況が悪化している。
  以上のような状況にかんがみ,地域住民の足を確保する立場から,中小民鉄,地方バス,離島航路等に対し,路線維持のための欠損補助,バス車両購入費補助,交通基盤施設整備のための国庫補助のかさ上げ,日本鉄道建設公団による国鉄地方開発線等に対する全額政府出資・完成後無償貸付等の助成を行うとともに,地域の実情に応じて,鉄道輸送のバス輸送への転換,路線バスの市町村代替バスヘの切替え等の措置がとられてきた。
  特に,地方におけるバス路線維持の問題は,最近過疎地域のみならず地方全般に及んできており,各論第I部で述べるとおり50年度より現行の補助制度を大幅に拡充することとした。
  以上のような諸対策によって,地方における生活交通を確保していくこととなり,これには,地方公共団体等地域住民側の協力があることが前提であるが,人件費の上昇等による事業者の一層の経営悪化,地方公共団体等の財政難など困難な問題が残っている。


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