3 海上交通の安全対策
海上交通の安全については,従来から各種の対策を講じてきており,海難の発生件数は徐々にではあるが減少傾向を示している。
しかしながら,49年11月の東京湾におけるタンカー衝突事故,50年1月のマラッカ・シンガポール海峡におけるタンカー座礁事故等の大型船の事故にみられるとおり,最近の海難の態様は一旦それが発生した場合,その規模の大型化,特殊化は深刻な問題であり,周辺海域に与える影響も極めて大きなものがあるという傾向を示している。
従って,今後このような事故が再び発生することがないよう各種の安全対策を総合的な観点に立って,より効果的に推進していく必要がある。
また,海上の利用は単に交通の場のみとしてではなく,生産の場,レジャーの場等極めて広範にわたっていることから,交通の安全を確保するとともに,これら相互間の調整を図ることが今後安全対策を確立するうえで特に重要な課題となるであろう。
以上のような要請の中にあって,海上交通の安全対策として49年度に講じた主な施策は以下の通りである。
まず,航路,港湾,航路標識の整備等交通環境の整備を図るとともに,船舶の構造,設備等における安全性の向上のため,安全に関する各種基準の整備と検査体制の充実,強化を選るほか,運航要員の資質の向上,水先制度の改善等船舶の運航面における安全性の確保を推進した。また,海事関係法令の周知,徹底と安全運航指導の強化等海上交通の安全に関する知識の普及にもあらゆる機会を通じて力を注いでいる。特に,東京湾等の船舶交通のふくそうする海域においては,海上交通安全法による交通規制の徹底,巡視船艇による船舶の交通整理及び指導取締りを行うほか,東京湾海上交通情報機構の整備を進めるなどの安全対策を講じた。更に,海上保安体制の強化,海難防止のための研究開発等の諸施策を推進している。以上のほか,最近になって急増しているモーターボート,遊漁船等の小型船舶の安全対策についても,49年に小型船舶検査制度及び小型船舶操縦士の免許制度が新しく確立され,今後は,その実施体制の充実を図っていくこととしている。
また,第75回国会において,東京湾等を強制水先にするために必要な水先法の一部改正が行われた。
なお,第10雄洋丸事故等の大事故の再発を防止するため,航行管制の強化等海上交通安全法の見直しについて海上安全船員教育審議会に諮問し,現在検討中である。
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