4 海洋汚染の防止対策
海洋汚染の未然防止措置としては,海洋汚染防止法を中心に規制の強化が図られてきているが,最近においては,48年7月の海洋汚染防止法の一部改正で取り入れられた排出油防除資材の備え付け義務に関する具体的基準が49年7月に定められ,排出油の防除体制が一層整備されることとなった。このほか国際的なものとして,「海洋投棄規制条約」,「1973年の船舶からの汚染の防止のための国際条約」が採択されているが,我が国としては,これを早期に国内法にとり入れる必要があり,現在,その準備作業を進めている。
運輸省では,このように海洋汚染防止のための規制を整備,強化する一方,港湾において廃油処理施設,廃棄物処理施設の整備を行い,また,船舶におけるビルジ排出防止装置,汚物処理装置等の整備を促進するとともに,既に汚染されている海域については,しゅんせつ等の汚染防除事業を実施しているほか,49年度からは,一般海域清掃事業を実施している。
一方,海上保安庁では,海洋汚染の監視と取締りを積極的に実施するとともに,監視,取締体制及び汚染防除体制の充実強化に努めている。
また,大量流出油事故等の海上災害に対処するため,広域的な海上防災体制の整備,海上防災活動の円滑な実施に関し,法的措置の必要性を含めて全般的な検討を行っている。
このほか,海上保安庁及び気象庁においては,海洋汚染の実態把握のため,それぞれ日本周辺海域及び西太平津海域において海洋汚染の調査を実施している。
一方,油濁事故が起った場合の補償制度としては,現在,PI保険等民間の制度があるが,法的な制度として国際的には,「油による汚染損害についての民事責任に関する条約」及び「油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する条約」が採択されている。我が国においても,これら両条約を早期に批準し,国内法化するための手続きが進められている。なお,原因者が判明しない油濁による漁業被害についても救済措置を講ずる必要があることから国,都道府県,関係業界が応分の負担をして,救済金,防除費,漁場清掃費等の費用に充てることになり,そのための機構として財団法人漁場油濁被害救済基金を50年3月3日に設立した。また,流出油事故が発生した場合,すみやかに防除措置を講じ,補償交渉の円滑化を図る等のため,内航タンカー業者が自主的に拠出した基金を活用する制度が(社)内航海運安全油濁公害防止協会として,50年6月に発走した。
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