5 今後の課題


  交通機関がもたらしている公害が,航空機新幹線鉄道騒音問題などにみられるように深刻化,社会問題化しており,これが産業活動によるものと並んで環境問題の大きな柱となっている。このため,これまで述べてきた公害防止対策の一層の推進に加え,次のような長期的視野に立った総合的な対策を推進する必要がある。

(1) 総合的対策の推進

  交通公審を解決するためには,交通機関自身が行う直接的な公害防止対策に加え,国土利用のあり方などに関する総合的な対策を進めなければならない。このため,環境保全に関する長期的な計画,土地の有効利用のための計画などの策定に当たっては,交通公害対策をも十分考慮に入れる必要があるとともに,公害の防止をも踏まえた交通体系の確立を図る必要がある。

(2) 環境影響評価の実施の推進

  従来の環境行政においては,ややもすれば急速に深刻化する汚染の事後処理に追われ,被害が発生するに至って,ようやく対策が講ぜられる事例も見られたが,今後わが国の環境を良好な水準に維持していくためには,汚染の未然防止を徹底することが不可欠である。このため,環境に影響を及ぼすおそれのあるものについて,環境への影響を事前に評価する必要がある。これについては47年6月,「各種公共事業に係る環境保全対策について」の閣議了解がなされまた,周知徹底が図られた。港湾,空港等の交通施設の建設に際し,個別に環境影響評価について調査を実施してきたが,今後とも環境影響評価を一層充実徹底させ,事業を進める必要がある。しかしながら,交通施設の整備に伴う環境影響評価の手法については方法論が十分に開発されていないため,環境影響評価の手法開発について48年度から研究調査を行っている。

(3) 公書防止費用負担の適正化

  これまで述べてきた,交通公害対策を推進していくためには,巨額の費用を要する。これらの費用負担については,適切な原則に基づき公平な負担がなされるべきである。このため,近年,汚染防止に必要な費用は,汚染者が負担すべきであるという汚染者負担の原則が国の内外ともに主張されてきた。この考え方は資源の最適配分を達成するためにも社会的公平を実施するためにも有効と考えられるが,交通公害対策についてもこの考え方に沿って,最近においては,50年9月から航空機の特別着陸料及びジェット特別料金の徴収等が実施されることとなった。
  しかしながら,汚染者負担の原則をさらに進めていくにあたっては,必要最小限の生活基盤としての交通施設から生ずる公害の対策費用などについての公費負担問題を含め,負損すべき費用の範囲,負担を課す場合,どの段階で,誰に,どのようにして負担させるべきかといった徴収技術を含む負担金の徴収手続の問題など今後さらに検討を加えるべき問題が多い。

(4) 公害防止に関する研究開発の推進

  交通公害の防止技術の研究開発は,公害問題の桟木的解決のひとつであり,その推進は,問題の解決を図る上で極めて重要である。このため,各交通施設について,発生源対策としての汚染の発生機構の解明,公害防止機器の研究開発等を実施しているほか,輸送機関そのものの低公害化についても,都市用低公害車や浮上方式による低公害鉄道の研究開発を進めている。これら研究開発については,今後とも積極的に推進していく必要がある。


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