1 多国間会議
従来外航海運はその国際的性格から,海運運営に関する政府の干渉をできる限り排する,いわゆる「海運自由の原則」,及び領海における無害通航,公海における自由通航を認める,いわゆる「航行自由の原則」に基づき運営されてきた。しかしながら,南北問題のひとつとして開発途上諸国の諸要求に基づく従来の国際海運制度の見直しの動きがあらわれている。
例えば,昭和49年4月にジュネーブにおいて採択された「定期船同盟憲章条約」の主な内容は@同盟加入のオープン化,A国別積取率の原則の設定(両当事国の等量化,三国船がある場合には相当程度の供与)B運賃凍結期間の設定を含む運賃変更手続の導入C紛争解決のための国際調停手続の導入等,従来の海運自由の原則に基づく海運秩序に大きな変革をもたらすものである。
また,第3次国連海洋法会議は,50年3月から5月までジュネーブで第3会期が開催され,第4会期が51年3眉から8週間,ニューヨークで開催される予定であるが,本会議では当初,領海の幅員の設定が主な議題であったが,海洋利用について,開発途上国の経済利益への配慮の要求がなされ,総合的な海洋法体系の洗い直しへと進展しており,特に,海運に関係の深い問題としては,領海の拡大,経済水域及び汚染防止ゾーンの設定による沿岸国の管轄権拡大と関連して,領海あるいは海峡における船舶通航のあり方等,航海自由の原則について新しい観点から検討が加えられつつある。
その他,海運をめぐる国際的動きとしては,政府間海事協議機関(IMCO)を中心として,船舶の安全対策,海洋汚染防止対策の強化が図られている他,荷主等に対する海運企業の責任の厳格化を図るため,49年12月,アテネにおいて「海上旅客,手荷物の運送に関するアテネ条約」が採択された。また,IMCOでは引き続き「1957年船主責任制限条約」の改正及び「難破船の除去に関する条約」の採択問題を審議することとしている他,国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)における「1924年船荷証券条約(へーグ規則)」及び「1968年回条約改定議定書(ウイスビー規則)」の改正条約草案の採択のための国際会議の開催等が予定されている。
一方,貿易活動には,輸送業者をはじめ,商社,銀行,保険等多種多様の事業者が関与し,その事務的経費は貿易額の10%にも達するといわれており,現在,国連の欧州経済委員会(ECE)を中心に,貿易関係手続の簡易化の作業が世界的な規模で進められている。(なお,我が国では貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)が49年12月に発足している。)
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