4 労働問題


  国鉄における労働組合の組織状況は, 〔I−(I)−15表〕のとおりであり,全職員42万3,111人のうち,組合加入者は約36万2,000人である。
  49年秋闘では,国労及び動労は,新幹線博多開業諸問題,運転保安確保,合理化反対,生活防衛一時金等の要求を掲げ,7月以降11月下旬まで数波にわたる闘争を行った。生活防衛一時金については,公労委の調停が不調となり,仲裁申請を行ったが,12月19日には要求は認め難いとの仲裁裁定が下された。

  この闘争による影響は,旅客列車2万3,252本,貨物発車1万3,487本,影響人員6,011万人に及び,減収による損失は102億円に達した。
  50年春闘に際して,国労及び動労は,大幅賃上げ(国労4万7,951円,動労4万7,000円),スト権奪還,不当処分阻止,インフレ対策,全国一律最低賃金制の確立等の要求を掲げ闘争を行った。これに対し,当局側は,5月7日正午から予定された84時間ストを前に有額回答(1万964円)を提示したが,組合側は,この回答を不満とし,また,スト参加者の処分をスト権問題の結論が出る本年秋まで凍結を要求してストライキに入った。しかし,同月10日公労委の調停が不調となり仲裁移行が決定し,ストライキは72時間ぶりに中止された。また,賃金問題については,労使の主張の開きが大きく,例年のように「調停委員長見解」が提示されないままに仲裁移行が決定し,6月9日調停段階で非公式に伝えられたとおり,8%+4,600円の仲裁裁定が下された。
  仲裁裁定実施のための所要額は,1,550億円であり既定予算では実施が予算上可能とは断定できないと判断されたため,公労法第16条による国会の承認を求め,同月24日衆議院,翌25日参議院でそれぞれ承認された。
  50年春闘による影響は,旅客列車5万5,251本,貨物列車2万6,491本,影響人員5,970万人に及び,減収による損失は130億円に達した。
  このほか主な地方闘争としては,本年2月に新幹線,名古屋地区及び長野地区等で,新幹線博多開業を含む3月10日ダイヤ改正等合理化反対の要求を掲げ,また,6月には北海道で動労がDL化に伴う車両基地の統廃合反対及び道内のダイヤ改正反対の要求を掲げ,それぞれ闘争が行われた。
  また,48年12月以降一連の争議行為の責任者及び参加者に対する処分の実施が遅れていたが,5月31日に解雇者19名を含む9,127名の懲戒処分を行った。(3月31日には50年3月の北陸地区の争議行為に対する処分が行われている。)
  49年の春闘を契機として,同年5月内閣に公共企業体等関係閣僚協議会が設置され,公務員制度審議会の答申を尊重しつつ,三公社五現業等のあるべき性格と労働基本権問題について協議し,本年秋頃までに結論を出すことを目途としている。同協議会においては,専門的事項を調査検討するために設けられた専門委員懇談会(学識経験者20名により構成)を中心に検討されることになっており,目下,同専門懇は,関係省庁並びに企業体の労使双方からの現状説明及び意見聴取のほか,海外事情の調査等をも実施し,鋭意検討しているところである。


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