3 海運企業の責任の厳格化


  海上輸送の安全確保と海洋汚染の防止に対する国際的な世論の高まりを背景として,船舶の安全及び船舶起因の海洋汚染防止について,国内外において各種の規制の強化が図られているが,一方,荷主等に対する海運企業の責任の厳格化を図る政府間機関の動きが顕著となっている。
  政府間海事協議機関(IMCO)では,49年12月,アテネの外交会議において「海上旅客・手荷物の運送に関するアテネ条約」を採択し,人損に対し約1,680万円(70万フラン),自動車約120万円(5万フラン)及び手荷物約30〜43万円(12,500〜18,000フラン)の補償限度額の制度を確立した。またIMCOは引続き「1957年船主責任制限条約」の改正及び「難破船の除芸に関する条約」の採択問題を審議することとしている。
  また国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)では,南北問題の一環として開発途上国の改正要求の強かった「1924年船荷証券条約(へーグ規則)」及び「1968年同条約改正議定書(ウイスビイ規則)」の改正問題を,国連貿易開発会議(UNCTAD)の要請に基づき審議し,既に「改正条約草案」のとりまとめを終り,52年の国連全権会議での採択を予定している。
  国連貿易開発会議(UNCTAD)は,「海運委員会」の下部機構として,44年に設立された「国際海運立法部会」において,51年1月及び7月に前述のUNCITRALでとりまとめられた「船荷証券改正条約草案」を審議し,さらに52年「海上保険」,53年「用船契約」及び54年には「共同海損」の各問題の審議を予定している。このほかUNCTADでは,「国際複合運送条約採択問題」及び「コンテナ規格の統一問題」についても政府間準備グループ等の場を設けて検討を行っている。


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