2 近海船問題


  我が国を中心とする近海貿易は,輸出では鋼材,肥料,セメントが,輸入では石油類のほか木材,鉄鉱石,石炭が主たる対象貨物であるが,特にインドネシア,マレーシア,フィリピンからの南洋材輸入が大宗を占めている(石油類を除く一般貨物の約6割)。
  このため,最近の不況により我が国の住宅建築が減少し,木材輸入需要が激減したことにより船腹過剰問題が生じてきている。
  この分野の船舶は,取引の実態,相手国の港湾事情等により中小型の一般貨物船に限定されており,船舶の大型化,近代化等による合理化が困難であるため,日本船は,船員費を中心とする諸経費の高騰をカバーできず近年著しく国際競争力を喪失するに至っており,日本船を所有運航する海運会社は深刻な危機に立たされている。
  近海の分野において一定量の日本船を維持することは,資源輸入国である我が国経済にとって,また,船員の職場を確保するためにも望ましいことであると考えられるが,その維持のため日本船の使用強制のような公的規制を行うことは海運自由の原則により困難であり,日本船を継続的に使用するための具体策については,荷主,船舶運航事業者,船主,労働団体等の関係者による真剣な検討と一層の努力によってこれを見出していく必要があろう。
  これらの問題に対する長期対策としては,計画的な住宅建設の実施に伴う輸送需要の振興及び安定化が最も重要であるが,当面,過剰日本船の計画的整理,残存日本船のコストの引下げ等を行っていく必要がある。なお,取りあえずの措置として政府系中小企業金融機関からの融資のあっ旋を行った。


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