3 内航海運企業の現状
(1) 内航貨物運賃及び企業経営の動向
内航貨物運賃は原則として自由運賃制であるが,近年に至り,日本内航海運組合総連合会と荷主業界との間で,輸送量,船腹量,運賃等に関する基本的な考え方について話し合う場が確立され,その話し合いの上に立って各船社は各荷主との間で具体的な運賃交渉を行う体制が整ってきた。
このような体制によって決まった49年度の代表的な航路の大宗貨物運賃は, 〔II−(I)−17図〕にみるように,対前年度比で40%弱の上昇となっている。これは船費の50〜60%を占める船員費が,49年春闘において約46%の上昇となったこと,その他運航費等のコストも大幅な上昇になったことによるものである。
一方,49年度の経営状況は, 〔II−(I)−18表〕に示すとおり営業損益は横這いであるが,営業外損益の好転により経常損益は48年度に比べ好転している。これを上期,下期に分けてみると上期は順調に推移したが,先にも述べたとおり輸送量が下期にいたり減退が著しいので,下期の収支内容は悪化の傾向にある。このため,50年3月には内航海運業を中小企業信用保険法に基づく「倒産関連中小企業」に指定して事業資金借入れについての債務保証対策を講じるとともに,50年度に入って中小企業救済特別融資制度を適用し必要資金の融資のあっせんを行っている。
(2) 企業構造の現状
49年度末現在の内航海運業者は 〔II−(I)−19表〕のとおり14,205業者であり,48年度末に比べて855業者の減少となった。
これら極めて多数の事業者を擁する業界の実態をみると元請オペレーター,下請オペレーター,オーナーという二重三重の構造になっており,まず内航運送業(オペレーター)においては,中小企業基本法の中小企業の範ちゅうに属する資本金1億円未満の会社と個人経営で85%,同じく従業員300人以下が85%を占めており,一方,その支配する船腹量が1,000総トンにも満たない企業が4%に達している。
次に,船舶貸渡業(オーナー)においては,個人経営が59%も占めており,また,その所有船舶も1隻のみというものが74%となっており,企業構造の改善が課題となっている。
|