1 概況


  昭和49年度における旅客航路事業の輸送実績をみると 〔II−(I)−20図〕のとおり,旅客輸送量は経済不況に伴う消費の減退等のため1億5,467万人(前年度比9.7%減),74億4,955万人キロ(同1.2%増)と低調であった。

  一方,カーフェリーによる自動車の輸送量も 〔II−(I)−21図〕 〔II−(I)−22図〕のとおり過去数年大幅な伸びを示してきたが,乗用車が増加したものの,バス,トラックが落ち込んだため2,133万台(前年度比25%増),15億6,008万台キロ(同5.0%増)と微増にとどまった。
  これらのうち,長距離フェリーによる輸送量は 〔II−(I)−23表〕のとおり,旅客輸送量は550万人(前年度比6.1%増),29億3,583万人キロ(同8.6%増)となっており,また,自動車航送量は182万台(同1.7%増),10億5,262万台キロ(同1.0%減)となっている。その内訳をみると乗用車が93万台(同9.9%増)であったのに対しトラックは88万台(同5.7%減)であった。これまで乗用車を上回る伸びを示し長距離フェリー航路の発展を支えてきたトラックが,経済不況の影響により減少を記録したことが注目される。

  旅客航路事業は49年度末現在 〔II−(I)−24表〕のとおり,947事業者によって1,568航路が経営されており,その就航船舶は2,877隻,89万3,932総トンとなっている。これを前年度末に比べると事業者数,航路数,隻数とも減少傾向がみられるが,これは道路整備,観光需要の減少等による航路の廃止,再編成によるものである。

  しかしながら,このなかでフェリー航路は49年度に5航路増加し226航路となり,就航船舶も473隻,69万5,958総トン(前年度比5.4%増)となり,旅客航路事業に占める割合は隻数で16.4%,総トン数で77.9%(前年度73.7%)となった。
  全般的には在来船による旅客航路の衰退する傾向が強まり,カーフェリー航路,高速艇による旅客航路が増加しており,今後ともこのような傾向は継続するものと考えられる。
  旅客航路事業者の75%は個人又は中小企業者であり,自らの資金調達能力に限界があるため,政府はこれに対応して船舶整備公団と事業者との共有方式により老朽船の代替建造等を引き続き促進することとしているが,公団共有船舶は49年度末現在で,310隻,11万5,978総トン(前年度比17.2%増)あり,これらの国内旅客船に占める割合は,隻数において10.8%,総トン数において13.0%(前年度10.9%)となっている。


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