3 長距離フェリー航路の現状と今後


  長距離フェリー航路(航路距離300キロメートル以上のフェリー航路)は,49年8月以降鹿児島〜大阪,東京〜松阪の2航路が新たに開業し,50年7月現在26航路,航路距離合計1万7,863キロメートル(前年度比0.6%増)就航船舶56隻約42万総トン(同7.7%増)となった。
  この長距離フェリーの地域間航送能力を示したのが 〔II−(I)−26表〕であり,阪神〜北九州間が圧倒的に大きくなっている。

  次に長距離フェリー航路の利用実態を示したのが 〔II−(I)−27図〕であるが,トラック積載貨物の内容をみると,農水産品が20.3%と最も多く雑工業品,化学工業品等がこれにつぎ,鉱産品等の原材料は極めて少量である。また,乗用車による利用者の旅行目的については「業務」が最大であり,「業務兼観光」と合わせると約半数となっている。

  長距離フェリー事業は48年秋の石油危機以降,輸送需要の停滞とコストの急騰により急速に経営収支が悪化した。長距離フェリーの運賃水準は原則的には航路別原価主義に立って開業後5年で累積欠損を解消し,収支均衡しうるような価格として設定されている。
  このため大半の航路は償却その他の負担の大きい時期に石油危機による燃料費,船舶修繕費等の高騰,人件費の上昇,総需要抑制による需要の停滞という経済変動に遭遇した。これに対して事業者は主要荷主との提携の強化,利用率の減少した週末便・朝便の休止,経費の節減,予備船の売船等の経営合理化並びに運賃改定を行ってこれに対処しているが,一部には深刻な状態が発生している。
  しかしながら長距離フェリーは海陸協同一貫輸送における幹線輸送を分担して物流近代化の一翼を担っており,さらに道路交通混雑の回避及び道路交通事故の防止,道路交通騒音及び大気汚染の防止,運転者労働力等の不足の緩和,事業活動及びレジャーにおける行動範囲の拡大等のメリットを有しており,今後予想される安定成長経済下にあっても,関係事業者との密接な連携協力を図りつつ,適切に対応していくことが望まれる。


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