1 海上交通秩序の維持
海上輸送を基盤としたが我が国の経済成長は,沿岸水域,狭水道,港湾内における船舶交通のふくそう化,運航形態の異なる船舶の稼動に伴う複雑化及び船舶の大型化をもらした。このような状況のもとにおいて,船舶交通の安全を確保するためには,海上交通安全法,港則法等関係法令の適切な運用と励行によって海上交通の秩序の維持を図る必要がある。
(1) 海上交通安全法の施行状況
海上交通安全法は,船舶交通の特にふくそうする東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海の3海域における船舶交通の安全を図るため,航路における交通方法と船舶交通に危険を及ぼす行為の規制とを2本の主要な柱としている新しい交通ルールである。
海上保安庁は,同法に定められた浦賀水道航路等11の航路を6ブロックに分け,各ブロックに1〜2隻の巡視船艇を常時配備し,更にヘリコプターを使用して航行船舶の航法指導を行っているほか,航路を航行する巨大船,危険物積載船及び長大物件えい(押)航船に対し,あらかじめ航路航行予定時刻の通報を義務付け,これらに進路警戒船の配備等必要な指示を行っている。
なお,昭和49年に11の航路を通航した巨大船,危険物積載船及び長大物件えい(押)航船の隻数は約3万5,000隻,1か月平均約3,000隻であった。
(2) 港内における交通安全対策
海上保安庁は,港内においては港則法に基づき船舶交通の安全を図っている。港則法は49年度末現在全国500港に適用されており,特に,船舶交通がふくそうし,大型船,外国船が常時出入する73港を特定港に指定し,港長を置いて,びよう地の指定,危険物の荷役等の規制を行っている。49年度には,水島港の特定港の指定,京浜港,鹿島港,水島港及び酒田港の港域の拡張等に伴い,港則法施行令等を改正した。
このほか,船舶交通の特にふくそうする17港27か所の水路においては,42の信号所により航行管制を実施している。
(3) 海上衝突予防法の改正
現在の海上衝突予防法は「1960年国際海上衝突予防規則」を国内法化したものであるが,近年の船舶交通のふくそう化,超大型船の出現等の海上交通の実態の変化に対応して,この規則を改正する必要が生じてきたため,47年10月IMCOの開催した国際会議において,新たに通航分離方式,深喫水船等の概念を導入した「1972年国際海上衝突予防規則に関する条約」が採択され,近々発効が予想されている。
我が国としても,このような状況に対処するため,現在,海上衝突予防法の改正作業を進めている。
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