3 大型タンカーの航行安全対策


  我が国における原油等のエネルギー資源の消費量は年々増加し,これらの輸入量は49年には原油27,800万キロリットル,LPG564万トン,LNG329万トンに達している。またこれらの輸送にあたるタンカーは,輸送効率の面から大型化している。
  49年に,我が国の特定港に入港した10万総トン以上の船舶756隻のうち705隻が原油等の危険物積載タンカーで占められている。
  これら大型タンカーがいったん事故を引き起こした場合には49年11月の東京湾におけるLPGタンカー第10雄洋丸と貨物船パシフィック・アレス号との衝突・火災事故,50年6月の原油タンカー栄光丸の乗揚げ・流出油事故等の例が示すように,火災,海洋汚染等のもたらす被害は船舶に限らず,水産資源,付近の沿岸,港湾施設等にも及び,その影響は計り知れないものがある。
  このような大型タンカーの事故を防止するため,海上保安庁は船舶交通のふくそうする海域においては,海上交通安全法により安全措置を講ずるほか,特に,東京湾については,22万重量トン以上の大型タンカーが原油を積載して初めて入湾しようとするときは,海上交通安全法に規定する事項の遵守のほか,見張りの強化,消防設備の設置,流出油の防除対策等の安全措置を講ずるよう指導している。
  また,2万5,000総トン以上のLPG,LNGタンカーが我が国に就航しようとするときは,ふくそう海域におけるボイル・オフ・ガスの放出制限その他大型タンカーと同様の安全措置を講ずるよう指導している。
  また,第10雄洋丸とパシフィック・アレス号の衝突・火災事故にかんがみ,海上交通安全法に定める航路の出入口付近における航法等について安全指導を強化した。
  他方,港内においては,港則法に基づき,事故防止対策を講じている。更に,港内及びその周辺海域においてタンカーがタンククリーニングを行うときは,事前に届出を求め,その実施海域について指導している。また,大型タンカーが着さんするバースについては,係留施設を設置する際に,離・着さん基準,荷役基準の作成等を指導している。
  タンカーの事故防止対策としては,このような安全対策を更に推進する必要があるが,石油コンビナート等が多く立地している東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海には大型タンカーの入湾隻数が今後も増加することが考えられるので,総合的な施策の一環である臨海工場の再配置,中継基地,パイプラインによる原油等の輸送システムの整備等と合わせて大型タンカーの入湾規制あるいは入湾船舶の総量規制等の施策が要請されている。


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