1 国際航空輸送
(1) 世界の航空輸送実績
昭和49年におけるICAO(国際民間航空機関)に加盟している128カ国の定期航空会社の輸送実績(中国を除く。)は,旅客輸送量についてみると,前年と比べ,旅客数で4.0%増の5億800万人であり,人キロで4.4%増の6,460億人キロ,貨物輸送量はトンキロで9.6%増の192億3,000万トンキロであり,郵便物輸送量は0.3%減の28億7,000万トンキロと石油危機を契機とする世界的な不況の影響を受けて全般的に停滞が目立った。
(2) 外国航空企業の乗り入れ状況
50年7月1日現在,我が国に定期便を乗り入れている外国航空会社は29社で,週間運航便数は325便(前年同期比1%増)であった。
(3) 国際航空運賃
ア 燃油費高騰等による値上げ
48年秋の石油危機を契機とする燃油費の高騰は,国際線各社の経営を大きく圧迫した。このため,IATA(国際航空運送協会,50年7月1日現在110社)は,燃油費の価格上昇分を吸収するため,4回にわたり,国際航空運賃を値上げする協定を成立させた。運輸省は,これらの協定を,それぞれ実施期日を49年1月20日,3月25日,7月15日,10月5日として認可した。この結果,49年中,国際航空運賃は,通算すると旅客22.6%,貨物22.4%の値上げとなった。
また,48年7月1日,日本円の実勢レートの高騰を反映させて,日本発円運賃を4%値下げしたが,石油危機を契機として,日本円の実勢レートが安くなり,49年秋以降1米ドル=300円前後に定着する傾向が見えたため,日本発円運賃を以前の水準に復元することとし,49年12月14日より,4%のカレンシー・サーチャージを設定した。
イ 国際航空運送秩序の混乱
IATAは,一連の運賃値上げにより,各航空会社とも燃油費高騰に伴うコスト増はほぼ吸収し得たが,人件費・物件費等の経費の上昇に伴うコスト増は吸収し得なかったとして,太平洋線及び東電アジア線について,49年9月から10月にかけてサンディエゴで開催された運送会議において,普通運賃・特別運賃とも8%値上げする協定を採択した。また,欧州線については,50年2月シンガポールで開催された運送会議において,普通運賃7%,特別運賃8%値上げする協定を採択した。
しかしながら,近時国際航空運賃が認可通りに収受されていない傾向が見受けられたこと,48年12月の運輸省の勧告にもかかわらず普通運賃と特別運賃との格差是正が依然として実現されていないこと,アメリカ政府が協定を一部不認可としたこと等のため,50年4月1日発効予定の本値上げ協定の認可を差控えるとともに,5月,日本航空,外国航空会社及び航空運送代理店に対し,不正販売行為の是正及び関係航空会社による航空運送の秩序回復のための委員会の設立を勧告し,運賃の収受状況に関する報告を求めた。その後,各航空会社はこれを受けて,国際航空運送秩序確立委員会を開くなど国際航空運送の秩序回復に対する姿勢が見え始めたため,実施期日を6月7日として,値上げを認可するとともに,併せて48年12月に引き続き,普通運賃と特別運賃との格差是正を勧告した(太平洋線は,アメリカ政府が一部不認可としたため,処分を保留した)。また,代理店手数料についても運賃水準の適正さに影響を与える重要な原価要素であるとともに,航空会社間の競争にも大きな影響を与えることに鑑み,その設定変更に際しては,あらかじめ,運輸大臣の承認を受けるように義務付ける等の措置を講じている。
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