3 航空をめぐる国際関係


(1) ICAOとの関係

  ICAOは,昭和19年シカゴで制定された「国際民間航空条約」(通称「シカゴ条約」)に基づき設立された国連の一専門機関で,国際民間航空の安全で秩序ある発達および国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営を図ることを使命としており,わが国は,28年10月にこれに加盟している。
  49年度においては,9月から10月にかけカナダのモントリオールにおいて第21会通常総会が開催され,今後3年間のICAO活動の基本線を確立するため幾多の決議が採択されてその幕を閉じた。なお,今次総会においては当直の経済的諸問題につき熱心な討議が行われ,最近の世界的インフレ傾向,石油危機に端を発した航空燃料油の値上げが航空経済に与える深刻な影響,騒音問題等による運航面の制約,チャーター輸送の発達による運送秩序の混乱等諸問題の解決を図るため,ICAOの主催にかかる世界的規模の国際会議の早急な開催を求める提案がなされ,主として発展途上国多数の支持を得たが,提起された問題が余りにも広範囲にわたるため,なおその取扱についてはさらに検討することとなった。
  次に,事務局が中心となって検討を進めてきた国際航空運賃の問題につき,過去3年間の研究の成果についての評価と,今後の作業計画の検討が行われたが,運賃決定のmachineryそのものの研究に切りかえるべきであるとするカリブ海諸国と,運賃決定のmachineryは極めて複雑で,その研究にはメリットはなく,これまでの研究を継続すべきであるとする先進諸国が対立し,結局妥協案として,従来の研究は継続することとし,その結果に基づいて少数の専門家のパネルを設けて運賃決定のmachineryの研究を行うことを決定した。
  このほか,次回総会までの3年間適用する航空機の運航に関するICAOの政策についての決議が採択されたほか,国際航空における航空機のリース,チャーター交換等の場合における技術上の問題について解決策を早急に見出すよう理事会に対し指示することを決定した。

(2) 二国間協定

  国際定期航空路を開設するためには,その国との間に2国間の航空協定が締結されるのが原則である。また,航空協定の締結後に路線,運航便数の変更等を行うには,通常,両国の航空当局の協議による決定が必要である。
  49年度においては,25カ国と延40回にわたって航空交渉を行い,このうち航空協定交渉は中国との間で行われた(49年4月20日締結,同年5月24日発効)。この結果,我が国は,50年8月現在,仮署名のものも含めて31か国との間に航空協定を締結している。これに基づいて日本航空(株)は,我が国の指定航空企業として,北部・中部太平洋線,北回り・南回り・シベリア経由欧州線,中国線,韓国線,東南アジア線及びオーストラリア線等を運航しており,世界の35都市へ週160便にのぼる定期便の乗り入れを行っている。
  なお,日米間の航空関係については,長年にわたって航空権益の不平等の問題が存在したままである。我が国は,これまでの交渉によりニューヨーク経由世界一周線,アンカレッジ経由ニューヨーク大圏コース及びグアム線等を獲得したが,いまだ両圏の航空権益の間には,中南米以遠権の制限,シカゴヘの乗り入れが認められない等の大きな不平等が残っており,我が国政府は機会あるごとに,これらの是正を米国側に要求している。しかし,こうした要求に対し,路線の価値をめぐり両国間には大きな認識の懸隔が存在するので,今後も日米間に懸案を残すことになると思われる。
  一方,我が国においては,航空交通のふくそう化,航空機のもたらす騒音等の問題がますます深刻化し,国際航空路線の今後の発展を図ることは極めて困難な状況になっている。二国間航空協定においては,我が国の航空企業と相手国の航空企業との乗り入れ便数は原則として相互主義の観点から同便数を運航することが予定されるものであり,我が国の空港事情によって,相手国の乗り入れ便数を制限する以上,我が国の乗り入れ便数についても同じような制限を受ける恐れがある。それゆえ,我が国をめぐる国際航空路線の発展のためには,空港問題,騒音問題等に対する配慮を十分に払い,これらの問題の解決を図ることが要請されている。


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