4 関西国際空港
(1) 関西国際空港の経緯
関西地区における航空輸送需要増等を理由とした運輸大臣の「関西国際空港の規模及び位置」についての諮問(46年10月)以降3か年の審議を経て49年8月13日,「その位置を大阪湾南東部の泉州沖の海上とし,当面その規模を海上の国際空港として最小の単位となる長さ4,000メートルの滑走路1組(少なくとも300メートルを距てた2本の平行な滑走路)に,長さ3,200メートル以上の補助の滑走路1本を加えたものとすることが望ましい」旨答申した。この答申においては,公害のない空港建設の可能性について,できるかぎりの手段を尽して検討を加えるとともに,新空港の必要性について,大阪国際空港(伊丹)の騒音問題の深刻化に伴い,その抜本的解決のために新空港が必要であるとしている。
また,諮問から答申に至る審議過程で検討された全資料を50年6月19日,「関西国際空港の規模及び位置-航空審議会答申-関係資料」という形に取りまとめて公開したが,この資料は,答申の裏付け資料として,関係地域の合意を得るために公開されたものであり,43年度から約13億円の経費をかけて実施してきた新空港に係る諸調査及び審議会の審議結果がとりまとめられている。
この資料によれば,審議検討は新空港の規模及び位置を決定することを目的として,主に候補地比較に重点を置いてなされたが,将来にわたって新空港が関係地域と共存共栄することは,現在の国民的,地域的要請からみて,必須の条件であるという見地に立ち,環境保全及び空港をも含めた周辺地域計画等には,特に意を用いている。まず,新空港を起因とする環境上の影響としては,航空機及びアクセス交通等による騒音及び大気汚染並びに海面消失及び建設工事による潮流変化及び海水汚濁が考えられ,本資料では,一応候補地比較を目的としながらも,人の健康若しくは生活環境又は漁業等の既存権益に及ぼす影響を,詳細に検討している、また,新空港が建設されることにより,何らかの形で周辺地域に発生する効果についても,社会的,経済的にそのプラス,マイナスを較量し,国あるいは自治体の周辺整備計画等に反映すべく検討を行っている。
(2) 今後の方向
今後,答申において最適地とされた泉州沖候補地について,十分な環境影響事前調査等を実施するとともに,大阪,兵庫及び和歌山の3府県並びに関係市町に対して,理解と協力を得るための協議を行い,地域社会の合意を得たうえで,国としての計画を決定する予定である。
また,50年度においては,空港整備事業調査費3億4,000万円を計上して,今後の環境影響事前評価の前提となる自然条件(気象,地象,海象)の観測を,海上及び周辺地域の海岸線で実施し,泉州沖に限定した,よりきめの細かな大気汚染,騒音及び潮流変化等の影響評価を可能とすることとしている。
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