第2章 国際環境の変化と運輸

  戦後,我が国は,世界の経済成長を上回る成長を遂げ,国際経済社会において枢要な地位を占めるに至っている。これに伴い,我が国と諸外国との間の貿易量も年々増大の傾向をたどってきており,これが世界に占める割合を金額でみると,輸入(CIF)は昭和48〜50年平均で7.6%,同じく輸出(FOB)は7.2%となっている。これを海上輸送トン数でみると,48,49年の平均では輸入は世界の18%(うち石油類15%,乾貨物23%),また輸出は世界の2%となっており,原材料を中心とする我が国への輸入は,量的にみて世界でも大きな割合を占めている。
  これら海上貨物を輸送するための海運活動を所要船腹と関連づけてみるために海上輸送トンマイルでみると,世界の主要貨物海上輸送量のうち,我が国向けの割合は,48,49年平均で,原油は16%,鉄鉱石は56%,また石炭は73%と世界で大きな割合を占め,全品日乾貨物では48%となっている 〔2−2−1表〕。また,このほか,雑貨等を輸送するコンテナ船については,世界の船腹の32%が日本を中心とする極東航路に投入されている。このように,世界の海上輸送活動(トンマイル)からみた我が国関係貨物のシェアは極めて大きなものとなっており,今や我が国は,世界海運市場の一大中心といえよう。

  以上のような状況を背景に,我が国の商船船腹量は年々拡充,整備されてきており,40年央には1,200万総トン(世界の7.5%で第5位)であったが,50年央には3,970万総トンで世界の11.7%を占め,リベリアに次いで世界第2位となっている。
  また,我が国の造船にあっては,31年以降新造船進水量において20年間連続して世界第1位であり,さらに41年以降は,毎年世界の約半分(47〜51%)のシェアを占めている。これは我が国造船業が上述のような日本関係を中心とした世界の海上荷動きの増加に伴う船舶建造需要の増大に対応して,新技術の開発,設備の合理化,近代化,さらには大型化等を積極的に行ってきたためである。
  一方,我が国出入国者数は,40年と50年を比べ入国外客数で2.2倍,日本人海外旅行者数で9.3倍と著しい伸びを示した。特に日本人海外旅行者数は,40〜50年まで年平均25%の高い伸び率で増加してきた。これら出入国者はほとんどすべてが航空機を利用しており,したがって国際定期航空路線に就航する我が国航空企業が世界の国際航空旅客輸送に占めるシェア(人キロベース)も,40年の2.2%から50年には4.6%に増大した。また,貨物輸送においても,我が国の貿易拡大等を背景に著しい伸びを示し,我が国航空企業が国際航空貨物輸送に占めるシェア(トンキロベース)は,40年の2.2%から50年には6.2%に増大した。
  このような状況から,51年9月末現在で,我が国航空企業は,IATA(国際航空運送協会〉加盟航空企業の貨客輸送ランキング(有償トンキロベース)において第4位を占めるに至っている。
  以上述べたように,我が国は運輸の面においても,国際社会の中で大きな比重を占めるに至っているが,それだけに国際環境の変化が我が国に及ぼす影響にも大きなものがあり,また国際協調の場における我が国の責任も一層重いものとなっている。
  このような状況の下,48年の石油ショックに端を発した世界的な景気後退は,世界経済の相互依存性の強まりの中で貿易の縮少をもたらし,これが海運・造船等運輸の分野に大きな影響を及ぼした。最近世界経済はようやく回復過程に入ったが,今回の景気後退による種々の後遺症は,これら運輸の分野においてはなお大きなものとなって残っている。


第1節 運輸をめぐる国際的諸問題

第2節 我が国商船隊の構造変化と造船不況の深刻化

第3節 発展途上国に対する経済協力