3 公営交通事業


  以上のように低迷を続けた運輸業のなかでも,地方財政の悪化を契機として公営交通事業の経営悪化が深刻な問題となっている。
  50年度末現在において地方公共団体が経営する交通事業数(地方公営企業法適用)は82あるが,このうちバス事業と地下鉄事業の50年度の決算をみると 〔2−4−11表〕のとおりで,49〜50年度にかけてバスは全事業が,地下鉄は4事業が運賃を改定したため,両事業ともに単年度欠損額は減少したものの累積欠損金はバス54事業で1,851億円,地下鉄5事業で1,5難億円に達している。

  公営乗合バス事業のうち都市公営乗合バス(人口100万人以上の都市を主たる事業区域とするものまたは保有車両100両以上のもの)26事業の50年度の営業成績は 〔2−4−12表〕のとおり,黒字を生じた事業は1事業(前年度はなし)で,49〜50年度の2年間に26全事業が運賃を改定したにもかかわらず,この周人件費が47%,燃料費が68%も上昇するなど経費も著しく増大したため,欠損額は460億円と前年度(442億円)に比べ18億円増加した。参考までに都市民営乗合バス32事業の50年度の営業成績をみると49〜50年度にかけて舵全事業が運賃改定を行ったため,黒字を生じた事業は前年度の5事業から19事業へと増え,全体の欠損額は17億円と前年度(160億円)に比べ激減した。

  次に公営乗合バスと民営乗合バスの経営内容をみると 〔2−4−13表〕のとおりで,公営は労働生産性が低いうえに給与水準が高く,総じて人件費が高いものとなっている。このため営業費用が民営に比べてかなり高い。

  公営地下鉄5事業の50年度の営業成績は 〔2−4−14表〕のとおりで,5事業のうち2事業が前年度同様黒字を生じ(ただし補助前では赤字),残り3事業は赤字であった。赤字を生じた東京都,名古屋市及び大阪市3公営地下鉄の50年度の欠損額の合計は206億円で前年度(305億円)に比べ約99億円減少した。これは補助金の増加(49年度補助金313億円,50年度同385億円)によるところが大きく,補助前の欠損額は590億円であり,前年度(618億円)と比ベて大差なかった。なお黒字を生じた札幌市及び横浜市に対する補助金は49年度83億円,50年度118億円である。また累積欠損金を生じている東京都,名古屋市,大阪市の3事業の累積欠損金の合計は1,569億円にのぼり,特に東京都の累積欠損金は営業収入の5.8倍にも達しており,経営悪化の度合が甚しい。

  以上みてきたとおり,公営交通事業の中には民間企業に比べ経営が非能率であることを指摘されるものが多く,公営交通事業のあり方に問題を投げかけている。これら公営交通事業の経営改善のためには適時適切な運賃改定を行っていくこともさることながら,バス路線の再編成,車両運用効率の向上,適切な人員配置,人件費の節減等による合理化の推進を図っていくことが必要である。


表紙へ戻る 目次へ戻る 前へ戻る