3 再建対策の実施
新再建対策を実施するための一つの柱である予算については,政府原案どおり成立したが,もう一つの柱である法律案については,成立が大幅に遅れ,11月4日にようやく成立することになった。この結果運賃改定は当初予定の6月1日から5か月余り遅れて11月6日実施されることとなった。この間,予定した増収が得られないため,これによる収入欠陥約2,700億円については,国鉄は漸次経費の抑制を行うことによって対処してきた。このため,工事費の抑制は約2,100億円に及び,東北新幹線を含む輸送力増強工事の新規発注は全面ストップとなり,公害防止,合理化のための投資も一部抑制され,さらには既契約についても一部解除のやむなきに至るなどの事態となつて,3万をこえる関連企業に深刻な影響を与え,50万人を超えると推定されるこれら企業の関係従業員の雇用問題すら懸念されるに至つた。また,物件費の抑制についても業務費の節約はいうに及ばず,照明,冷暖房等の節約で旅客サービスにも影響を与え,外注修繕や業務委託の抑制によつて,関連零細企業に倒産のおそれも懸念された。加うるに,修繕費,動力費の抑制は,遂に列車ダイヤにも影響を及ぼすことになり,11月以降,運休,編成長の短縮等の対応を余儀なくされることになつた。
法案成立の遅延は,このように甚大な影響をもたらしたが,ともかく法案が成立し,国鉄再建へ大きく一歩を踏み出すことになつた。今後,運賃改定の遅れによる影響を最小限に留める努力をするとともに,当初予定したフレームに従つて,着実に再建を軌道に乗せていくことが必要となろう。国鉄再建の基本的な仕組みについては,一応の措置がとられることとなつたが,貨物輸送,赤字ローカル線,要員合理化,運賃改定等今後さらに検討すべき問題も多く残されており,関係者の一層の努力が必要であろう。とりわけ,国鉄自身においては,労使一丸となり,発想を新たにして,真の再建を達成していくという意欲と努力が要請されよう。
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