2 民間運輸企業設備投資の現状


(1) 設備投資実績

  民間運輸企業の50年度の設備投資実績は工事ベースで1兆1,169億円(前年度比16.2%減),支払ベースで1兆1,963億円(同7.7%減)であった。実質値では工事ペースで16.4%減,支払ベースで8.0%減と前年度に引き続き減少したが,その落ち込み幅は前年度のそれに比べ縮少した 〔2−6−12表〕

  ちなみに,経済企画庁の法人企業投資動向調査(資本金1億円以上の企業を対象)によれば全産業の50年度実績(工事ベース)は,前年度比7.6%減,うち製造業は13.5%減,非製造業は2.1%減であり,全産業に比べ民間運輸企業の投資実績の落ち込みは大きかったといえよう。
  まず民間運輸企業のうち運送業部門(海運,陸運,航空等9業種)では,8,484億円(工事ベース,以下同じ)で前年度比10.0%減であった。これはハイヤー・タクシー事業及びバス事業が車両購入等により,それぞれ前年度比9.5%増,同2.8%増と前年度を上回ったものの,他の7業種は,通運業が自動車,荷役設備等への投資の減少により同30.5%減,トラック事業が車両購入等の減少により同21.9%減,航空運送業が航空機材等への投資の減少により同20.0%減と大幅に落込み,また港湾運送業が土地・建物への投資の減少により同13.5%減,倉庫業が普通倉庫施設等は増となったものの,土地・冷蔵倉庫施設への投資の減少により同10.5%減,海運業が一般貨物船への投資は増となったもののタンカーの落込みが大きく,同9.2%減,民営鉄道業が停車場設備・車両への投資の減少により同5.7%減といずれも前年度実績を下回ったためである。
  次に製造業部門(造船業,造船関連工業及び鉄道車両製造業の3業種)は,1,387億円と前年度比40.2%の大幅な減少であった。これは,鉄道車両製造業が前年度比11.5%増となったものの,タンカーを中心とする世界的な船腹過剰を反映して造船業,造船関連工業がそれぞれ同44.2%減,31.3%減と大幅に落込んだことによるものである。
  その他部門(5業種)は,1,298億円で前年度比17.3%減であった。これは,自動車道事業が路線の延長等により前年度比21.2%増となったものの,他の4業種は,ホテル業が建物への投資の減少により同38.9%減,航空関連施設業がターミナル施設等への投資の減少により同29.9%減,港湾建設業が8.1%減,自動車ターミナル業がターミナル用地投資は大幅増となったものの建物整備の大幅な減少により同0.9%減といずれも前年度実績を下回ったためである。

(2) 資金調達の状況

  民間運輸企業の設備投資資金の調達内訳を50年度実績でみると,内部資金比率27.4%,民間金融機関借入金比率29.2%,政府金融機関借入金比率19.0%,株式・社債比率14.0%,その他10.4%であった 〔2−6−13図〕

  一方,全産業の50年度の設備投資資金調達内訳を日本開発銀行設備投資計画調査でみると,内部資金比率が41.2%,民間金融機関借入金比率24.1%,政府金融機関借入金比率64%,株式・社債比率21.8%,その他6.5%あった。全産業においては,内部資金比率を高くして設備投資の資金コストを低く抑え,また外部からの資金調達に際しても株式・社債の比率を高め,長期かつ安定した資金への依存度を強めているこれに対し,運輸企業は内部資金比率が著しく低いうえに,株式・社債比率も低くなっている。一方で,政府金融機関借入金比率が著しく高く,また,民間金融機関借入金比率もかなり高くなっているのが特徴である。したがって,運輸企業にとっては,このような設備資金の借入れに起因する金利負担が大きな経営圧迫要因となっているといえよう。
  なお,民間運輸企業の50年度の設備投資資金調達内訳を49年度のそれと比較してみると,内部資金比率は0.4ポイント減少したものの,民間金融機関借入金比率及び政府金融機関借入金比率のいずれも3.2ポイント,1.8ポイントそれぞれ減少し,株式・社債比率が3.5ポイント増加しており,他産業と同様,社債依存度をやや強めたといえよう。
  次に業種別に政府金融機関からの融資実績の推移をみると, 〔2−6−14表〕のとおりであるが,これによれば,民営鉄道業の大都市圏での混雑緩和,ターミナル整備,冷房化の推進等輸送力増強のための施設整備に対する融資が急速に伸びてきているが,47年度から都市周辺の民営鉄道施設の建設工事等は日本鉄道建設公団において施行することとなったこともあり,49,50年度は伸びが鈍化している。一方,外航船舶(計画造船)整備に対する融資実績は,47年度まで漸増の傾向を示してきたが,その後は日本船の国際競争力低下に伴う建造意欲の減退などを反映して48年度から減少傾向に転じてい。造船業においては,船舶建造の新規受注減による設備投資意欲の減退もあり,50年度は大幅に落ち込んだ。その他,物流近代化の推進等を背景に倉庫・港運,道路貨物運送等への融資が伸びている。


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