2 交通安全対策の推進


  以上のような交通事故の発生状況及びその特徴を適確に把握し,適切な安全対策を講じて事故の防止を図ることは何よりも急務である。このため,運輸省は,たえず,安全確保を運輸サービスの基本と認識し各般の施策の推進に努めているところである。
  50年度に実施した安全対策の概要と,今後の方向は以下の通りである。

(1) 安全対策の実施状況

  各交通機関ごとに50年度に講じた具体的な施策はそれぞれ各論関係の章に記述するとおりであり,航路,港湾及び空港等交通環境の整備をはじめ,水先法,踏切道改良促進法等交通安全関係法令の改正,安全運行(航)確保のための取締りと適切な指導の実施,車両,船舶,航空機の安全検査の実施等各種の対策を総合的な観点から実施した。
  これらの施策を講ずるにあたって必要とした50年度の安全対策関係予算は 〔2−7−7表〕に示すとおり総額約1,308億円であり,前年度に比較し約27%の増加となっている。

  さらに,51年度についても,総額約1,703億円と50年度を30%上回る安全対策関係予算を計上しており,2-(2)-アで述べる第二次交通安全基本計画の初年度分としての施策の推進を図り,事故の一層の防止に努めることとする。

(2) 交通安全対策の今後の方向

 ア 第二次交通安全基本計画の推進

      51年3月,第一次交通安全基本計画(46〜50年度)に引き続き51年度から55年度までの5か年間を計画期間とする第一次交通安全基本計画が策定された。この計画は人命尊重の理念を基本に踏まえ,交通機関そのもの,それを運転(航)する人間,交通環境を三本柱として作成されている点では第一次の計画と変るものではないが,個々の施策は最近の交通情勢及び事故の特徴等に対応したものといえる。各交通形態別の施策の重点は以下の通りであり,今後この計画に基づく施策の推進を図り交通事故の防止に努めることとする。

 (ア) 道路交通

      道路交通上弱い立場にある歩行者及び自転車利用者の安全確保を重点に施策を推進し,抑止目標は過去最高であった45年の事故死者数(16,765人)の半減(8,400人)を図ることとする。

 (イ) 鉄軌道交通

      運転事故の過半数を占める踏切事故死傷者数の減少を図るため,踏切事故防止総合対策(51〜55年度)を推進する。

 (ウ) 海上交通

      船舶交通が特にふくそうする海域におけるカーフェリー,危険物積載船等の事故防止を図る。また第5次港湾整備五箇年計画(51〜55年度)に基づき,航路,港湾等交通環境の整備を進める

 (エ) 航空交通

      航空交通の安全を確保するとともに,その効率化を図るため航空路レーダーの拡充整備と管制情報処理に係るシステム化を中心に,第3次空港整備五箇年計画(51〜55年度)に基づく安全関係施策を推進する。

 イ 過密への対応

      第二次交通安全基本計画の策定に伴い安全に関する長期的な施策の大綱が定められたが,これらの施策を実施するうえで今後特に問題となるのは過密への対応であろう。
      国土の開発に関する諸計画の進展に伴なって,人口,産業等の地域分散は徐々に進みつつあるが,いわゆる大都市の過度集中状況は依然として続いており,これは交通の状況にも如実に表われている。たとえば,東京国際空港に離着陸する航空機は約1分45秒に1機であり,また東京駅にはラッシュ時に1分間に約15本の割合で電車が出入りしており,さらに東京湾に入湾するため浦賀水道を通過する船舶は約1分45秒に1隻を数える状態である
      こうした過密状況に加えて,1-(2)-アで述べたように,各交通機関は著しく高速化・大型化しており,それ故に事故の防止に対する要請は一層高まっているといえる。
      安全対策の推進は,直接増収に結びつかない場合が多く,今後の安定成長下における運輸事業にとっては大きな負担となろうが,その重要性に鑑み,従来にも増した企業努力が望まれる。
      一方交通空間が限定されている状態で高まる交通需要に対応して単に追随的な安全対策を講じていくということは,極めて多大な努力と費用が要求されることになる。
      したがってこのような事態を避けるため,今後は,発生する交通量に応じて,事前に産業立地等の地域計画との十分な斉合性を図りつつ,長期的な観点からの交通安全に対する配慮を払っていかなければならない。一方,現在の過密状況を打開するために,たとえば,ふくそうした内湾へ入湾する大型の原油タンカー等を,湾外シーバースで受け,パイプライン輸送に代替する等の抜本的な対策の推進もまた必要である。
      なお,ふくそう海域等における外国船舶の海難の多発の状況に鑑み,これら船舶に対し,海上交通安全関係法令の周知,水先人の乗船の勧奨等事故防止に努めている

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