1 大型タンカーの安全対策
タンカーは原油等の危険物を大量に積載しているため,いったん事故を引き起こした場合には,火災,海洋汚染等により,その被害は事故船舶のみにとどまらず,付近の船舶はもとより港湾施設,水産資源あるいは沿岸等にも及び,その影響は計り知れないものがある。
この種事故を未然に防止するため,船舶交通の特にふくそうする東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海の3海域については,前述のとおり海上交通安全法により航路を設け,特別の交通方法と交通に危険を及ぼす行為を規制しているが,特に一定量以上の原油,LPG等の危険物積載タンカー等に対しては,航路通航に際し事前通報を義務付け,その動静をは握し,巡視船艇と航空機により指導と警戒に当たっている。また航路を通航するこれらの船舶に対しては,進路を警戒する船舶,消防設備を備えている船舶又は側方を警戒する船舶を告示された基準に従い配備するよう指示している。
更にこれらの安全対策を一層徹底するため,東京湾に初めて入湾する22万重量トン以上の原油タンカーについては,事前に所定の安全措置状況の点検を指導し,2万5,000総トン以上のLPG,LNGタンカーについては,ふくそう海域におけるボイル・オフ・ガス(液化ガスがその貯蔵輸送の間に蒸発したガス)の放出制限を指導するとともに,一定トン数又は長さ以上の危険物積載船等に対しては,水先人の乗船動奨等広範囲にわたる指導に努めている。
一方,港内においては,港則法に基づきこれらの船舶の安全確保を図っている。原油等危険物積載船が入港するときには,港域外で港長が事故防止についての必要な指揮を行うとともに,停泊,停留場所の指定,危険物荷役・運搬の許可,荷役場所付近の航行の制限・禁止等の措置を講じている。
これらの法規制にあわせて,港内及びその周辺海域においてタンカーがタンククリーニングを行うときは,事前に届出を求めその実施海域について指導している。また大型タンカーが着さんするバースについては,係留施設を設置するときに,離着さん基準,荷役基準の作成,安全防災設備の装備等を指導し事故防止を図っている。
一方,大型タンカーが湾内に入ることなく湾外において離着さんしうる湾外シーバースについては,現在,構造,設置箇所等について調査を継続して行っている。
構造,設備の面からの対策としては,狭水道における大型船舶の衝突予防を図ること等により船舶の航行の一層の安全を確保するため,長さ200メートル以上の船舶に航海用レーダー2台を,その他の一定の船舶に一台を設置することを義務づけた。
なお,タンカーの安全をより向上させるために防火構造及び消火設備に関する規程を定めたIMCO勧告「タンカー及び兼用船に対する火災安全措置を実施するための勧告」を総トン数500トン以上のタンカーに適用するように現在作業中である。
また,LNG及びLPG運搬船等の構造設備についてはその安全確保を図るため,一隻ごとに運輸大臣が特別な指示を行っているが,現在IMCOにおいてこれら船舶に対する国際的統一安全基準の作成作業が行われており,上記の指示にあたってはこれらの作業結果を踏まえて必要な指示を行っている。
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