2 カーフェリーの安全対策


  カーフェリーは,多数の旅客,乗組員とともに燃えやすい自動車を同時に大量に積載しているため,ひとたび事故が発生すると大惨事となるおそれがあり,事故防止のためカーフェリーの安全対策を以下に述べるとおりきめ細かく推進している。
  まず,運航全般を通じ一貫した安全輸送の体制を確立するため海上運送法により旅客航路事業者に運航管理者の選任,運航管理規程の制定等を内容とする運航管理制度を設けさせている。
  更に,運航管理制度の実効を期し旅客航路事業の指導監督体制の強化を図るため,運輸省海運局,地方海運局及び沖縄総合事務局に運航監理官を設けている。
  運航監理官は,事業場における監査のみならず,実際に運航中の船舶に乗船して航路の実態に即応した運航管理体制の充実指導,運航管理規程の遵守状況の監査等を実施している。
  また,カーフェリーの運航の安全管理における陸上サイドの最高責任者である運航管理看に対し,毎年研修を実施し,その資質の向上に努めている。
  次に運航管理の一つの重要な柱になっている運航中止条件について,規定をきめ細かく,実効あるものに整備することとし,各事業者の運航管理規程及び運航基準を改正させた。
  カーフェリーの構造,設備については,その特殊性を考慮してカーフェリーの特殊基準を充実強化し,それに基づいて船舶検査を実施しており,更に,この特殊基準に基づいて施設される船舶設備の機能を充分発揮させるため,カーフェリー点検整備操作標準マニュアルを作成し,カーフェリーの運航事業者に当該マニュアルを参考にして自社の各カーフェリーについての点検整備操作マニュアルを作成のうえこれを励行させるよう指導している。
  更に次の事項について強力に指導を行うとともに,その的確な実施を図るため,船員労務官による乗船指導監査を実施した。
 ア カーフェリーの特性及び当該航路についての気象,海象及び海上交通事情等に精通した船舶職員又は実習訓練によりこれらを十分修得している者を乗り込ませること。
 イ 船舶職員が航海当直を常時行うことができるように,航海時間及び航海の態様に見合った数の船舶職員を乗り組ませること。
 ウ 船員法に基づき発航前検査の励行,操練の実施,船内巡視制度の設置
  海上保安庁においては,海上交通関係法令に基づく航法の遵守,運航管理規程の遵守等に関して指導を行い,また,平素から機会あるごとに安全運航の指導,緊急時の避難・救助訓練,関係法令の励行等に努めている。50年には,前述の全国海上交通安全運動及び全国海難防止強調運動期間中に,合わせて1,754隻のカーフェリー等旅客船を訪船し,安全運航に関する指導を行ったほか,一般旅客船を含め49回の事故対策訓練を実施し,旅客等の避難救助対策の向上に努めた。
  また,カーフェリーの海難調査に当っては,事業者の運航管理体制等事故の背景にある問題点も含めて詳細に事故原因の解明を行い,濃霧期における一般船舶との通航分離,車両甲板等立入禁止区域への立入りの防止,運航中止条件の厳守,見張りの強化等について関係者に勧告し,安全指導を強力に推進している。


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