2 日本の国際航空輸送状況


(1) 概要

  50年度の我が国の国際航空輸送実績は 〔III−1表〕のとおりである。国際航空輸送量のバロメーターである有償トンキロは,49年度が前年度に比べ0.1%の増加と低い水準にあったが,50年度は16.8%の増加と再び大幅な伸びを示した。

  輸送力についてみると,各路線で機材の大型化,便数の増加に努めたため,飛行時間5.2%,飛行距離6.4%,有効トンキロ9.8%の増加となった。
  この結果,重量利用率は,49年度に比べ3.6ポイント増加し,59.7%となった。
  日本航空(株)の路線運営状況についてみると,50年度にはマニラ-バンコク線及びボンベイ-カラチ線が開設され,東京-バンクーバー-メキシコ線及び南回り欧州線の一部にB-747型機が投入された。また,東京-サンフランシスコ・ロサンゼルス間が直行化され,東京-マニラ線,大阪-プサン線等で増便が実施されたほか,51年度に入ってからは東京-ホノルル線等で増便が行われた。この結果,51年7月1日現在,便数は旅客便週149便(前年同期133便),貨物便週30便(同27便)となった。
  台北路線は,49年4月21目から運休されていたが,日本アジア航空(株)が50年9月15日から東京-台北間の運航を開始した。同社は51年度に入ってから大阪-台北線を開設し西日本の需要に応じるとともに,台北-香港線及び台北-マニラ線を開設し台北以遠の運送も行っている。
  次に,我が国の国際航空輸送量を世界の国際航空輸送量と比較してみると 〔III−2表〕のとおりである。世界全体の伸びに比較して我が国の伸びが高いのが注目される。世界の国際航空に占める我が国のシェアは前年に比べ若干増加したが,順位は旅客人キロで世界第4位,貨物トンキロ及び有償トンキロでそれぞれ世界第5位と前年と同じであった。

(2) 旅客輸送

  50年度の日本航空(株)及び日本アジア航空(株)の国際線旅客輸送量は,旅客人員260万7,000人,旅客人キロ138億8,300万人キロであり,前年度に比べそれぞれ14.0%,9.9%の増加であった。49年度がそれぞれ11.4%の減少,2.2%の増加であったのに対し,再び高い伸びを示し,輸送実績は48年度の水準を回復した。これは全般的な景気,特にアメリカの景気の回復の結果,旅客とりわけ外国人の旅客が増えたこと,東京-サンフランシスコ・ロサンゼルス間を直行化した結果競争力が向上したこと,南回り欧州線,バンクーバー・メキシコ線で大型機の投入による輸送力の増強に努めたこと,アジア地域の政情が安定化したこと,及び日本アジア航空(株)の発足により台北路線が再開したこと等による。旅客人キロの伸びが旅客人員のそれを下回っているのは,飛行距離の長い北回り欧州線が不振だったのに対し,比較的近距離の需要が増えたことによる。一方,旅客座席キロは輸送力の増強により11.1%増加したが,座席利用率は49年度より0.7ポイント低下して58.8%となった。
  50年度旅客輸送実績を国際線路線別にみると 〔III−3表〕のとおりである。北回り欧州線は低調であったものの,大型機を投入した南回り欧州線は各地点で旅客を増やし,人キロ46.2%,座席キロ54.3%の増加となった。太平洋線も大型機の投入,東京-サンフランシスコ・ロサンゼルス間の直行化により,人キロ9.7%,座席キロ13.9%の増加となった。また,東南アジア線は同地域における政情安定化や日本アジア航空(株)の発足が寄与し,人キロ15.6%,座席キロ6.3%の増加となった。
  次に,50年度の我が国出入旅客について我が国航空企業の積取比率をみると 〔III−4表〕のとおりである。太平洋線2.2ポイントの増加,北回り欧州線横ばい,南回り欧州・東南アジア線1.3ポイントの増加で,合計で49年度に比べ1.2ポイント増加し32.4%となった。太平洋線の積取比率が増加しているのは,直行化により競争力が向上したことによる。また,台北路線の再開により,東南アジア線でも積取比率が増加している。

(3) 貨物輸送

  50年度の日本航空(株)及び日本アジア航空(株)の国際線貨物輸送量は,11万7,727トン,8億4,191万トンキロと,前年度に比べそれぞれ36.6%・29.5%の増加となった。49年度においては重量,トンキロでそれぞれ8.8%,4.5%の減少を示した航空貨物についても,一転増勢に転じた。また,我が国出入航空貨物量も 〔III−5表〕のとおり,49年度の3.9%の減少から,28.1%の増加となった。これは全般的な景気,特にアメリカの景気の回復により輸出が急増したためである。なかでも50年度は韓国東南アジア諸国から日本経由アメリカ向けの繊維製品及び日本発アメリカ向けのトランシーバー等の電気機器の輸送が目立った。
  日本航空(株)及び日本アジア航空(株)の積取比率は,出国,入国とも前年度に比べ増加した。これは,上記韓国東南アジア発日本経由アメリカ向けの繊維製品を獲得したことによる。
  貨物の品目別では,引き続き電気機器,機械製品,繊維製品等運賃負担力の大きい品目が高い比重を占めている。
  一方,航空貨物は,近年パレット化・コンテナ化を推進して合理化が図られたこと,また各社が相次いでB-747型貨物専用機を投入したことなど,従来に比べ様相を一新しつつある。

  また,最近の日本航空(株)及び日本アジア航空(株)の貨物チャーター便実施状況は 〔III−6表〕に示すとおりである。定期航空貨物運賃より低い水準の運賃で運送することのできる航空貨物チャーター輸送は,利用度の高いものとなっている。

  なお,国際航空貨物輸送に係る複雑な手続事務を迅速かつ正確に処理し,国際航空貨物の流通の改善等を図るための情報システム化が必要となっているが,運輸省では,48年度から民間団体である国際航空貨物輸送情報システム開発協議会(JACIS)の協力を得て開発を推進しており,50年度には,輸入業務のシステム構想を策定するとともに,新たに,輸出システム及び国際データ伝送システムの調査研究に着手した。

(4) 航空関係国際収支

  50年度の我が国の航空関係国際収支は 〔III−7表〕のとおり,4億500万ドルの赤字と,依然大幅な赤字である。これは,日本人の海外旅行者が多い反面,日本航空(株)の横取比率が低いことによる。しかし前年度に比べ3,300万ドル赤字幅が縮少しているのが注目され,これは輸出の急増により貨物運賃の収支が黒字に転じたこと,我が国航空企業の経費削減により港湾経費等の収支が改善されたことによる。


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