3 航空をめぐる国際関係
(1) ICAOとの関係
昭和28年10月にわが国が加盟したICAOは,昭和19年シカゴで制定された「国際民間航空条約」(通称「シカゴ条約」)に基づき設立された国連の専門機関で,国際民間航空の安全かつ秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営を図ることを使命としている。
50年度においては,へーグで改正されたワルソー条約のうち貨物及び郵便物に関する部分が46年のグァテマラ会議において改正されていなかったので,9月にカナダのモントリオールにおいて,ICAOワルソー条約改正外交会議が開催され,次の諸点について討議が行われた。@ 近い将来のコンピュータによる貨物データ処理システムの導入に伴う航空運送状関係規定の改正,A 責任原理と運送人の抗弁権,B 延着損害に関する責任原理,C 責任限度額,D 金フランの各国通貨への換算問題,E 新議定書とグァテマラ議定書の衝突問題。審議の結果,貨物に関する責任限度額にSDRの表示を用いることを含んだ貨物条項改正議定書が採択された。
この他の重要な会議としては,技術関係の耐空性委員会第11回会議が51年2月から3月にかけて同じくモントリオールにおいて開催され,次の議題について討論が行われた。
@ 飛行機の性能に係る問題,A 飛行性,B 構造問題,C 計器及び装備,D 動力装置,E 自動系統の証明,F 航空機の鳥衝突対策。この結果,ICA0耐空性技術マニュアルの内容を航空技術の進歩にあわせて更新するよう,各種の勧告が採択された。
(2) 二国間協定
国際定期航空路を開設するためには,その国との間に2国間の航空協定が締結されるのが原則である。また,航空協定の締結後に路線,運航便数の変更等を行うには,通常,両国の航空当局の協議による決定が必要である。
50年度においては,21か国と延べ28回にわたって航空交渉を行い,このうち航空協定交渉はサウディアラビア及びイラクとの間で行われたが締結までには至らなかった。サウディアラビア及びイラクとの航空協定交渉は,我が国への乗入れを強く希望する両国からの要請により開催されたものである。
我が国は,51年8月現在,仮署名のものも含めて31か国との間に航空協定を締結している。これに基づいて日本航空(株)は,我が国の指定航空企業として,北部・中部太平洋線,南回り・北回り・シベリア経由欧州線,中国線,韓国線,東南アジア線及びオーストラリア線等を運航しており,世界の35都市へ週179便にのぼる定期便の乗り入れを行っている。
なお,日米間の航空関係については,長年にわたって航空権益の不均衡の問題が存在したままである。我が国は,これまでの交渉によりニューヨーク経由世界一周線アンカレッジ経由ニューヨーク大圏コース及びグアム線等を獲得したが,いまだ両国の航空権益の間には,中南米以遠権の制限,シカゴヘの乗り入れが認められてない等の大きな不均衡が残っており,我が国は機会あるごとに,これらの是正を米国側に要求している。現在,52年5月迄に両国航空権益を見直すための交渉を米国と行っているが,路線の価値をめぐり両国間には大きな見解の相違が存在するので,今後の交渉の難航が予想される。
一方,我が国においては,航空交通のふくそう化,航空機のもたらす騒音等の問題がますます深刻化し,国際航空路線の今後の発展を図ることは極めて困難な状況になっている。
二国間航空協定においては,我が国の航空企業と相手国の航空企業との乗り入れ便数は原則として相互主義の観点から同便数を運航することが予定されるものであり,我が国の空港事情によって相手国の乗り入れ便数を制限する以上,我が国の乗り入れ便数についても同じような制限を受けるおそれがある。
なお,現在我が国には,30か国以上の国から航空協定締結の申し入れがあるが,我が国の空港事情のため,これについても断っている状況である。それゆえ,我が国をめぐる国際航空路線の発展のためには,空港問題,騒音問題等に対する配慮を十分に払い,これらの問題の解決を図ることが要請されている。
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