2 進展する輸送構造の変化


  国内貨物輸送量の推移をみると, 〔2−1−8表〕のとおり,40年度から48年度までの8年間に,トンキロで2.19倍となり,この間の年平均伸び率は10.3%と高い伸びを示している。

  また,これを輸送機関別にみると,この間,自動車が2.91倍,内航海運は2.58倍と高い伸びを示した。一方,鉄道は1.02倍とほとんど横ばいに推移している。
  このように,高度成長期を通じ,自動車輸送及び内航海運が大きく成長してきたが,その背景及び要因についてみると以下のことがあげられる。
  まず,自動車輸送についてみると,需要面では,第1に,金属機械工業品軽・雑工業品等比較的ロットは小さいが価値が高く,運賃負担力に富む需要が増加したが,自動車輸送はこれらの輸送分野でその特性を買われて輸送量を伸長させた。第2に,高度成長期を通じ,太平洋ベルト地帯へ,産業及び人口が集中し,これに伴い同地域を中心とする貨物輸送量は全地域間輸送量の8割近くを占めるに至った。このような太平洋ベルト地帯への輸送需要の集中は,中短距離輸送に特性を発揮できる自動車輸送を増加させた。また,供給面では,高速道路をはじめとする道路の整備が急速に進められたこと,トラックターミナルの整備が進められたこと,12トン積みの大型車が出現するなどトラックの大型化が進められたこと等により,供給力が増大するとともに,人件費を中心とするコストダウンがもたらされた。このため,輸送の機動性,随時性を求める産業の要請に適合することを可能にしてきた。
  次に,内航海運は,石油,鉄鋼,セメント等の基幹産業物資を大宗貨物として,ここ10年間,著しく輸送量が増大した。これは,石炭から石油へのエネルギー構造の転換,臨海部における重化学工業の発展等に対応して,物資別適合輸送のための専用船化,適正船型の開発等が行われるとともに,港湾施設についても,専用岸壁の整備,荷役の機械化等が図られ,輸送の合理化,効率化が進められたことによるものである。内航海運における主な専用船化の状況は 〔2−1−9図〕のとおりとなっている。

  一方,鉄道貨物輸送の衰退の原因についてみると,石炭から石油へのエネルギーの転換,資源の海外依存度の増大等により,大宗貨物であった石炭等の鉱産品木材等の一次産品の減少,大都市周辺部の臨海コンビナートの建設を中心とする産業立地の変化による輸送距離の短距離化,我が国の産業構造の変化による二次産品の輸送需要の増大等,そもそも鉄道にとってその特性を発揮しにくい方向に経済構造が変化したことが大きく影響している。また,国鉄貨物輸送については,相次ぐ争議行為が輸送の安定かつ効率的な提供を妨げ,荷主の信頼を低下さ世,これに拍車をかけたこと等が指摘される。
  こうした強い増勢傾向にあった国内貨物輸送需要も,49年度以降その様相を一変している。
  すなわち,前述のとおり,国内貨物輸送量(トンキロ)の伸びは,すでに,45年度頃から高度経済成長に対する追随関係にかげりを生じ,48年度をピークにその後落ち込んだまま伸び悩んでおり,51年度になっても48年度の水準に達していない。これを各輸送機国別にみたものが 〔2−1−10図〕であるが,各輸送機関とも,49年度以降は輸送量が停滞し,高度成長時代のすう勢とは異なった動きを示している。

  まず,自動車は,30年代後半から40年代前半までの高度成長期を通じて,前述のような要因により,輸送量及びシェアを拡大したが,45年度以降輸送量の伸びは鈍化し,47年度をピークに以後,概ね減少傾向にあり,また,分担率も同様の動きを示している。これは,48,49年度以降の公共投資及び民間設備投資を中心とする投資活動の伸び悩みに伴い,自動車輸送のかなりの部分を占める骨材等建設資材関係の輸送量が減少したこと,耐久消費財等自動車のシエアの高いいわゆる雑貨輸送需要が伸び悩んだこと等に起因していると考えられる。なお,自動車の輸送トンキロを営業用及び自家用の別でみると,40年度には国内貨物輸送量に占める割合がそれぞれ12.0%対14.0%で自家用が上回っていたが,45年度を過ぎると営自ほぼ同量を輸送するようになり,最近の動向をみると,自家用トラックの輸送量がピーク時の47年度と比較し,2割以上減少し,なお下げ止っていないのに対し,51年度の営業用トラックの輸送量は同じくピーク時の47年度に比し5%減にとどまっており,同じ自動車輸送にあっても,自家用トラックの不振が目立っている。
  次に,内航海運は,45年度以後も石油製品,鉄鋼,石灰石等の大量基幹産業物資の輸送を中心に増加したが,最近の状況をみると,48年度をピークにして50年度まで内航海運輸送主要品目のほとんどが大幅に減少しており,51年度になってようやく回復の兆しをみせている。
  また,鉄道は,45年度までは輸送量を伸ばしてきたものの,それ以後は下降の一途をたどっている。
  このように,48年度までの高度成長期と,その後の安定成長への移行期とでは,貨物輸送需要及び各輸送機関の輸送量の動向も大きく変化しており,特に,高度成長期における輸送機関の大幅な分担率の変化に比し,ここ数年間の各輸送機関の分担率の変動は小幅にとどまっている。
  ここで,現在の輸送構造が10年前のそれとどのように異なっているか,地域別,品目別,距離帯別等に比較対照してみることとする。

(1) 地域に係る輸送構造の変化

  地域間及び地域内輸送量をみると, 〔2−1−11表〕, 〔2−1−12表〕のとおりで,東海道3地域(関東7都県,東海4県,近畿6府県)に係る輸送量の全地域間輸送量に占める割合は50年度で77.3%と大きく,また,全地域内輸送量に占める割合も47.4%と50%近いものとなっている。しかしながら,産業の地方分散化も進んでおり,東海道3地域以外の地域間及び地域内輸送量は,40年度から50年度までの10年間にそれぞれ2.43倍,2.15倍と伸び,全体に占める割合もそれぞれ18.6%から22.7%,46.6%から52.6%と増加しており,そのウエイトを高めている。

  また,これらを輸送機関別にみると, 〔2−1−13図〕, 〔2−1−14図〕のとおりである。

(2) 品目別輸送構造の変化

  主要品目別に貨物輸送量の推移をみたものが 〔2−1−15表〕である。

  産業構造の高度化により二次産品が似年度から51年度にかけて,トンキロで約2倍に伸びている。このうち,特に,石油製品の伸び(3.39倍)を中心とした化学工業品(2.25倍)や軽・雑工業品(2.17倍)の伸びが目立ち,鉄鋼,機械を中心とする金属機械工業品は1.63倍となっている。一次産品は鉱産品が1.64倍に増加したものの,農畜水産品が横ばい,林産品が減少した(0.88倍)ため,1.43倍の伸びにとどまっている。また,エネルギーの転換が進み,鉱産品のうち石炭が0.43倍と大幅な減少を示し,石油製品の大幅な伸びと対照的である。
  なお,これを輸送機関別分担率の推移でみると, 〔2−1−16図〕のとおりとなっている。

(3) 距離帯別輸送構造の変化

  輸送機関別距離帯別輸送トン数の分担率の推移を示したものが 〔2−1−17図〕である。

  国鉄は全距離帯にわたってそのシェアを縮小し,自動車は近距離において圧倒的シェアを占めているのみならず全距離帯においてそのシェアを拡張し,特に,中長距離への進出が著しく,41年度と51年度を比較すると全輸送機関中で自動車の分担率が50%を占める分岐点は,160キロメートルから220キロメートルヘと移動している。内航海運は中短距離で若干シェアを拡張しており,特に長距離ではその強みをみせている。


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