1 高度化・多様化する旅客輸送
国内旅客輸送量の推移を示したものが 〔2−1−24表〕及び 〔2−1−25図〕である。41年度の国内旅客総輸送人員は320億8,800万人であったが,51年度には,466億6,800万人と1.45倍の伸びを示した。国内旅客総輸送人キロでは,41年度には4,036億7,800万人キロ,51年度には7,093億5,700万人キロと1.76倍の伸びを示している。
このような輸送需要の増大には,輸送施設の整備,交通網の拡充,輸送技術の革新等によるところも大きく,なかでも新幹線,航空,高速道路等幹線交通網の整備の進展による時間短縮効果には著しいものがある。
この10年間においても 〔2−1−26図〕, 〔2−1−27図〕のとおり,鉄道では新幹線の開業,電化,複線化等により,航空でもジェット機の導入,空港整備により,それぞれ時間短縮が行われた。
自動車においても,高速自動車道路の整備が進み,時速80〜100キロメートルの走行が可能となり,走行時間にして約50%短縮された。
さらに海上においてもホーバー・クラフト,水中翼船等の利用による高速化が進められてきている。
旅客が交通機関を選択する場合の一般的な条件としては,安全性,低廉性,高速性,快適性,機動性,正確性等が考えられるが,経済成長に伴う国民生活水準の向上は,これらの条件の中でも特に高速性,快適性,機動性への要請を高め,これらの要請に対応した上述のような輸送担当側の努力とも相まって各輸送機関別の分担率も大きく変化してきている。
まず,ここ10年間の旅客輸送人キロ増加分に対する各輸送機関の寄与率をみると, 〔2−1−24表〕のとおり,鉄道19.9%,自動車73.5%,航空5.6%,旅客船1.0%となっている。
次に,輸送機関別の分担率の変化を人キロでみると,鉄道は,紅年度当時で64.1%を占めていたが,この10年間に1.24倍の増加にとどまり,51年度にはその分担率は45.0%に低下した。国鉄は49年度をピークとして,以後,不況等の影響もあって,50年度,51年度には輸送量が減少している。この中にあって,39年10月分東京〜大阪間の新幹線の開通に引き続き,47年3月に岡山まで,50年3月には博多までの開通をみて,新幹線の輸送量は過去10年間に3.32倍に増加しており,その国内総輸送量に占める割合も,41年度の3.6%から51年度には6.8先を占めるに至った。
民鉄は,大都市圏における通勤・通学を主体とした輸送需要の増大もあって,人キロでみると,徐々に輸送量を伸ばしている。ただ51年度には,人員で若干の減少をみた。
自動車は,41年度の34.3%から46年度には鉄道をしのぎ,51年度には51.2%を占めるに至った。自動車の輸送人キロの内訳をみると, 〔2−1−25図〕に示すとおり,国民所得の増大,行動の迅速性の要請の高まりなどにより乗用車が著しい進展をみせている。このうちでも,ハイヤー・タクシーがほとんど横ばいに推移しているのに対し,自家用乗用車は虹年度から51年度にかけて5.98倍と大幅に伸びている。
乗用車の保有台数(軽自動車を除く。)からみても営業用は41年度末から51年度末の10年間に1.51倍になったにすぎないが,自家用は6.90倍と急増し,51年度末には1,596万1,000台と自家用だけで全保有台数(3,104万8,000台)の51.4%を占めている。
しかしながら,この自家用車の保有台数の年平均伸び率は41年度末から46年度末の5か年と46年度末から51年度末の5か年とを比較すると,280%から15.0%へと低下してきている。また,自家用乗用車使用の指標の推移をみると, 〔2−1−28表〕のとおり,実働率,実働1日1車当たり走行キロ,実働1日1車当たり輸送回数,実働1回1車当たり走行キロ,実働1回1車当たり平均輸送人員は,45年度頃からいずれも年々減少してきており,ここ数年は,保有台数の増加につれて,個々の車の使われ方が少なくなってきていることを示している。
このような動きを反映して,自家用乗用車による輸送量の伸び率は46年度を境にして鈍化してきている。
しかしながら,自家用乗用車の乗用車1台当たり人口でみた普及率は,西欧諸国のそれと比較していまだ格差があること,地方においてなお一層の普及が見込まれること,道路の整備が進められていること,乗用車使用の個人化が進行していること,週休二日制の普及等により自由時間が増加していること等からみて,伸び率は鈍化するものの今後とも絶対数は増加傾向を持続するものと予想される。また,自家用乗用車の輸送量は,46年度以前ほどではないが,最近,再びその増勢を強めており,これは49年度以降の各種運賃改定の影響も考えられるが,自家用乗用車に対する根強い選好を物語るものである。
次に,バスについては,乗合バスは大都市,地方いずれにおいても自家用乗用車の著しい増加の影響を受けているが,大都市においては路面交通混雑による運行効率の低下,競合輸送機関の整備などにより,また,地方においては過疎化の進行による旅客輸送需要の減少等もあって,遂年その輸送量が減少している。
貸切バスは主として観光用に用いられるが,近年の観光輸送需要が大人数の団体旅行から小グループ旅行へと移行する傾向があること等により,従来,貸切バスの旅客層であったものが自家用の小型バス,乗用車に転移していることなどもあって,その伸びが比較的小さい。また,最近2か年間には景気の停滞の影響もあって輸送量は減少している。
自家用バスは,小型車を主体にこの10年間にその保有台数が3.6倍の増加を示し,輸送量も人キロで3.25倍となり,国内旅客輸送量に占める分担率も51年度は3.8%(41年度2.1%)に増加している。これは工場,会社等の事業所において従業員の通勤輸送,慰安旅行等に,旅館,ホテル等において顧客の送迎用等に多く用いられるようになったことによるものである。しかしながら,最近2か年間では景気の停滞の影響もあって輸送量は減少している。
さらに,航空の国内旅客輸送量に占める比重はいまだ小さい(51年度人キロ分担率2.8%)が, 〔2−1−24表〕のとおり,その伸びは高く,この10年間に人キロで6.98倍(年平均伸び率21.4%)に増大し,輸送人員でみても51年度には,2,800万人が利用しており,年間4人に1人の割合で利用するまでに普及した。
このような新幹線,自家用乗用車,航空の高い伸びは,高速性,機動性,快適性へのより強い志向を示すものであり,旅客輸送に対する国民の意識がより高度な輸送へと変化してきていることを示している。
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