3 開港への動き
政府及び空港公団は,新空港の早期開港に努めてきたところであるが,52年1月,内閣総理大臣の指示をうけ,早期開港のための施策を一層強力に推透してきた。
(1) 航空燃料の確保
新空港で使用する航空燃料については,当初,千葉港頭からパイプラインで新空港まで輸送し,ハイドラント方式により航空機に給油することとし,46年秋から,この計画に基づき着工したのであるが,翌年8月,諸般の事情により中断のやむなきに至った。このため,暫定的に千葉港及び 鹿島港から鉄道により成田市土屋まで輸送し,土屋から新空港までパイプラインによって輸送する方式により航空燃料を確保することとした。
鹿島港から新空港までの間を輸送するいわゆる鹿島ルートについては,50年8月,当該輸送を開始後3年以内とすること等を内容とする閣議決定及び臨時新東京国際空港閣僚協議会了承が行われた結果,51年7月,国,茨城県及び関係3町との間で合意に達し,これに引き続き,52年4月25日には鹿島ルート側千葉県内2市2町(成田市,佐原市,下総町,神崎町)との間で合意が成立し,同ルートについては解決をみた。
一方,千葉港から新空港までの間を輸送するいわゆる千葉ルートについても鋭意折衝を重ねた結果,6月3日,1市2町(佐倉市,四街道町,酒々井町)との間で,また,7月12日には市原市,そして9月14日には千葉市との間で合意が成立し,これにより,航空燃料暫定輸送問題は全面的に解決した。
(2) 妨害鉄塔の除去
4,000メートル滑走路延長上に反対派は,46年5月,高さ約30メートルの鉄塔を,また,加年3月には高さ約60メートルの鉄塔を設置した。
この2基の妨害鉄塔については,航空法の違反物件であるので,空港公団は殻霞者である反対同盟に対し,航空法に基づき除去すべき旨再三申し入れたが受け入れられなかったため,52年5月2日,空港公団はやむなく千葉地方裁判所に妨害物除去仮処分命令申請書を提出した。その結果,5月4日,仮処分決定がなされ,これに基づき5月6日,この2基の鉄塔は除去された。
(3) 空港周辺地域に対する施策
新空港周辺地域に対する施策は,用地補償,騒音対策道路,鉄道,用排水,新都市計画等広範多岐にわたって実施してきたところであるが,とりわけ,航空機騒音対策については,新空港の周辺地域における環境の保全を図る上から重要な問題と考え,住民の理解と協力を得て,鋭意推進してぎている。
すなわち,騒音対策については,新空港の位置決定と同時に閣議決定された「新東京国際空港の位置決定に伴う施策について」の中で,国が実施している騒音対策の基準等を勘案して,一定ホン(騒音の大きさの単位)以上のものについて格別の配慮を行うこと,騒音対策区域内の住家及び店舗で移転を希望するものについては,実情に応じ,移転先の斡旋移転料の支払等について国が所要の措置を講ずること等を内容とする方針が示された。
その後,42年8月1日には「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」が公布,施行され,同法及び上記閣議決定に基づき,千葉県等の協力も得つつ,移転補償,民家の防音工事助成学校,幼稚園,病院等の防音工事助成,共同利用施設の設置補助等種々の対策を進めてきている。
51年1月には,東京国際空港の国際線の発着便数,時間帯別の発着割合・使用航空機等の資料を基礎にA滑走路(4,000メートル)に係る騒音区域の指定がなされた。また,52年9月工6日,空港公団は,B滑走路(2,500メートル)周辺住民に対し,生活設計の参考に供するため,予測騒音コンター(予測される等しいWECPNL値を結んだ線)を発表した。
また,空港公団は,52年8月,国際線の主要機材であるB747-LRを使用して,騒音テスト飛行を実施した。このテスト飛行に際しては,地元自治体が騒音測定に参加するとともに,関係住民等が体験搭乗を行った。
今後の対策については,加年に地域住民も含めて設置された騒音対策委員会を適宜開き,住民の意見を十分聴きつつ,従来実施してきた対策を一層充実するとともに,離陸時の急上昇方式等による騒音軽減運航方式を採用することによって発生源からの対策を講ずることも検討している。
(4) アクセス対策
新空港が,都心から約60キロメートルの地点に位置することから,航空旅客,送迎客等の空港利用客の都心〜新空港間の輸送を円滑に行うための対策(いわゆるアクセス対策)が空港機能を維持していくために極めて重要な要素となっている。このような認識の下に,次の対策を講じている 〔2−2−11図〕。
道路輸送については,当面,首都高速7号線,京葉道路,東関東自動車道,新東京国際空港線を経由する高速バス,自家用車等により対応することとしており,既に関連の施設整備が完了しているが,さらに,これらの道路のバイパス機能を果たし,混雑の緩和に資するため,東京湾岸道路の建設を進めている。なお,都心〜新空港間の道路輸送については,関連の道路が時間帯等によってはかなり混雑することも予想されるところがら,空港利用客をできる限り鉄道等の大量公共輸送機関へ誘導することとし,情報提供,航空旅客の手荷物対策等所要の措置を講ずることとしている。
鉄道輸送については,当面,京成電鉄,国鉄総武・成田線により対応することとしており,既に所要の施設整備を完了しているが,国鉄線を利用する空港旅客の国鉄成田駅〜新空港間のバス輸送の円滑を図るため,最近の国鉄成田駅前周辺の混雑状況を勘案し,同駅の橋上駅化による駅前の整備駅前と国道51号を結ぶ連絡街路の建設及び国道51号の4車線拡幅を緊急に進めている。
また,将来のアクセス需要の増加に対処するため,鉄道や高速道路の建設を進めることとしている。
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