3 交通機関による騒音等
騒音公害については,発生が多源的であり,感覚的に意識されるため,古くからまた日常生活に深い係わりあいをもつ公害となってきた。道路交通,新幹線,航空機の騒音に関して多くの訴訟や紛争が生じる等交通騒音の問題は社会問題化しているのが現状である。
(1) 自動車交通騒音
道路交通騒音の状況は,環境基準を満足する測定点についてみると,50年においては全体の15.4%であり,毎年若干の改善はみられるものの全般的環境基準の達成にはほど遠い状況にあり,自動車騒音の規制の強化,道路周辺の環境対策の推進等について,より一層の努力が必要とされる。
自動車騒音規制は,46年から従来の定常走行騒音及び排気騒音規制に加え加速走行騒音についても規制が実施されてきたが,51年1月(乗用車及び小型トラックについては52年1月)から,大型車,2輪車の騒音許容限度を3ホン低減させることを中心とした新たな規制が実施された。さらに自動車騒音の許容限度の長期的設定方策について中央公害対策審議会から51年6月答申が出された。これによれば目標値を2段階に分けて4ホンから6ホン程度低減させることが適当であるというものである。道路交通騒音の現状に対処するためには,自動車騒音低減技術の開発を進め答申の線に沿った規制の強化が必要である。
(2) 新幹線鉄道の騒音
新幹線鉄道の騒音については,線路中心から25メートル離れた地点では,おおむね80ホン以下となっているが,新幹線鉄道の騒音に係る環境基準の円滑な達成に資するため,51年3月閣議了解された「新幹線鉄道騒音対策要綱」に基づ亀防音壁の設置,鉄げた橋りょうの防音工事等の音源対策及び住宅,学校,病院等に対する防音工事の助成,住宅の移転補償等の障害防止対策を推進している。
(3) 航空機騒音
航空機騒音については,近年において航空輸送需要の増加に伴いジェット化,増便等が行われたこと等により深刻な問題となってきている。このような事態に対処するため,国は,「航空機騒音に係る環境基準」の維持,達成を目標として,公共用飛行場周辺におげる航空機騒音による障害の防止等に関する法律に基づく措置をはじめとする諸対策を講じている。
航空機騒音対策は大きく分けて,発生源対策と空港周辺対策の2つに分類される。
発生源対策としては,騒音基準適合証明制度を法定し,ジェット機についてはその騒音値が一定の基準に適合している旨の証明を受けなければ航空の用に供することができないこととしたほか,騒音軽減運航方式の推進,深夜運航の規制,便数調整低騒音機の導入等の措置を講じている。
空港周辺対策としては,公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律に基づき,騒音による障害が著しい飛行場を「特定飛行場」に指定し,その周辺における住宅,学校,病院等の防音工事に対する助成,共同利用施設の整備についての助成,移転の補償及び土地の買取を実施している。52年6月には高知,広島両空港が特定飛行場に追加指定され,現在特定飛行場の数は15となった。また,特定飛行場のうち,周辺区域が市街化されている等の理由によりその区域について計画的な整備を要する空港については「周辺整備空港」に指定し,都道府県知事が策定する周辺整備計画に従って地域整備等を実施するほか,周辺整備機構が代替地造成事業,周辺再開発事業,共同住宅建設事業を行っている。現在,大阪国際空港及び福岡空港が周辺整備空港に指定されている。さらに,以上のような対策を講じても,都市における空港周辺地域の航空機騒音問題を根本的に解決しえない現状に鑑み,空港と周辺地域の土地利用との調和を図るために,かねてよりその必要性が指摘されてきた空港周辺における住宅等の立地規制制度を確立するため,「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案」,を52年10月,第82回国会に提出した。この法案は,宅地化の進展の予想される空港周辺の航実機の著しい騒音が及ぶこととなる地域について,都道府県知事が航空機騒音対策基本方針を定め,これに基づき,都市計画の域域地区制により,住宅等の建築制限を行うとともに,地域振興及び生活環境の整備のための施設整備を促進させるための措置を講ずること等を内容としたものである。
(4) 交通機関によるその他の公害等
交通機関によるその他の公審等については,道路交通,新幹線鉄道による振動,交通機関による電波障害,日照障害,自動車以外の交通機関による排出ガス等がある。このうち新幹線鉄道による振動に対しては,その防振対策が騒音対策と合せ実施されているほか,航空機による電波障害に対しては,テレビ難視聴に対する助成等が進められている。
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