2 船員需給の動向


(1) 外航の船員需給

  51年度の外航船員を遠洋区域航行船舶の大部分を占めている外船2船主団体(外航労務協会,外航中小船主労務協会)についてみると, 〔II−(II)−4表〕のとおり,前年に比べ船舶数,船員数とも減少しているが,予備員については,職員,部員とも増加している。

  船員数の減少は,タンカー部内を中心とする海運不況及び中小型船の国際競争力の抵下等を反映して,@不経済船の海外売船が大量に行われたとともに,A海運企業の日本船建造意欲の減退から,日本船の建造量が激減し,Bさらには外国用船,なかでも発展途上国船員を配乗することを目的とするいわゆる仕組船,チャーターバック船等が増大したこと等により,日本船の隻数が減少したためと思われる。
  一方,予備員については,ここ数年来増加傾向を示しており,予備員の区分別では,陸上勤務,出勤待機,有給休暇が全体の70.9%を占めるに至っている。これは,日本船の隻数の減少に伴い余剰となった乗組員が予備員として継続雇用されていること,週休2日制の導入により休暇日数が増大していることが反映したものと思われる。
  また,船員の採用状況をみると, 〔II−(II)−5表〕のとおりで職員,部員とも減少し,前年度比それぞれ56.1%,82.0%の大幅な減少となった。これは,企業の入職抑制によるためであるが,特に新規学卒者については,職員258人,部員110人の採用にとどまり,前年度比でそれぞれ60.2%,86.3%の減少となっており,新規学卒者の就職問題が大きくクローズアップされた。

  なお,商船大学・商船高等専門学校における海上就職率は, 〔II−(II)−6表〕のとおりである。

(2) 内航の船員需給

  内航の船員需給状況を内航3船主団体(内航労務協会,一洋会,愛媛船主会)が船主団体全内航とについてみると,前年に比して船員数,船舶数とも減少した。
  一方,予備員率については,職員で31.5%,部員で28.9%となっており,前年に比べ若干増加しているが,外航部門と比較すると,一般的に低い傾向を示している。
  また,船員の採用状況をみると,職員589人,部員1,149人が入職しているが,前年度に比べ,466%の大幅な減少となっており,このうち新規学卒者については,職員26人,部員217人の入職にすぎない。これに対し,船員経験者の入職は,職員560人,部員891人となっており,前年度に比べ減少はしているものの,船員経験者に対する依存度は依然として強く,全採用者の83.5%を占めている。
  なお,内航部門における入・離職率は前年度と比較して低下しているものの,外航部門と比較して,依然として高く,船員の流動性が大きいことを示している。

(3) 漁船の船員需給

  漁船の船舶数及び船員数は, 〔II−(II)−1表〕のとおりである。船舶数の増大は,51年3月1日に総トン数5トン以上10トン未満の漁船の一部について,船員法が適用拡大(第3次)されたこと等によるものである。船員の減少は,主として最近における国際規制の強化並びに諸経費の上昇等に伴う漁業経営の悪化によるものと思われる。
  漁船船員の採用状況を,周年操業をとっている遠洋まぐろ漁業遠洋トロール漁業,以西底曳網漁業についてみると,船員経験者92.3%,新規学卒者4.7%となっている。これは,漁船員の需要が漁撈技術に習熟した船員に集中する傾向があるとともに,厳しい労働環境等のために若年労働力の確保が困難であることによるものと思われる。
  また,漁船船員の採用についての特徴として縁故採用があげられるが,前掲の漁種においても縁故採用が全体の43.0%と高率を示している。


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