2 国際協調


  造船業に関する国際的諸問題については,従来より政府ベースでは経済協力開発機構(OECD)造船部会を通じて話し合いが行なわれており,我が国はこれに積極的に参加し国際協調の推進に努力してきたところである。しかしながら世界的造船不況の深まりを反映し,我が国造船業をとりまく情勢はまことに厳しく,最近では造船問題に関しECとの話し合いも行われるに至っている。OECDにおいては,50年春以降造船不況に関する検討が行われ51年5月には「造船政策に関する一般的指導原則」が採択され,以後各国政府は本原則を尊重して不況対策を講じていくこととなった。我が国はこれに基づき51年11月操業調整措置を実施した。折から日・EC間の貿易不均衡が問題となっており,造船においても一時的に新規発注が我が国に集中したため,造船問題もその一環として取り上げられていたところであったが,EC諸国は,我が国のこの措置になお不満を持ち,我が国の政策変更を要求した。51年12月の日・EC造船協議においてEC側は受注シェアの均等配分を要求したが,我が国は最近の新規受注の多くはキャンセルの穴埋めのものであり実質受注量はマイナスであること,不況による困窮度は新規受注量ではなく,引渡し年次別手持工事量で論ずるべきであること,そして引渡し年次別手持工事量でみる限り,双方の建造シェアは従来と同一水準であること等を指摘し,EC提案に反対を表明するとともに,今後の推移を見守っていくため,新規受注量,キャンセル量,引き渡し年次別手持工事量に関する情報交換を行うことを提案した。
  EC側は,我が方の態度に不満の意を表しつつも結局,我が方の提案に同意し,上述のような情報交換が行われることとなった。
  しかし,EC諸国は52年1月のOECD造船部会で再度上述の提案を行い,EC提案に対する我が方の態度の変更を要請し,それが不可能ならば少なくとも当面の問題を解決するため何らかの提案を行うべきであると主張したため本問題は重大な局面を迎えることとなった。
  我が国はこのような状況に鑑み,52年2月の第35回造船部会において,我が国造船業の窮状を十分に説明するとともに,今後,@我が国への生産の過度の集中を抑制するために,受注状況に影響を及ぼすよう船価を引き上げるための指導を行うこと(2,500総トン未満の船舶を食む。),A今後実施される情報交換により特に困難な状況にあることが判明した特定の国に対する輸出について,業界間の話し合いを前提として,その自粛方を指導すること,B我が国の建造量のシェアが従前のそれを上回ることが予想される場合には,操業調整措置の強化などにつき検討することの3項目の提案を行った。EC側は我が方の態度を評価し,これにより,EC側が一方的に対抗措置を講ずるという事態は一応回避され,問題解決の糸口が見出された。(なお,上記@については,既に52年2月より輸出船指導船価の5%アップの措置を実施している。)しかしながら,西欧諸国は,その後,船価助成や船主助成等種々の助成措置を導入するとともに,我が国に対しては一層の能力削減を求めており,本問題は今後も議論が続けられて行くこととなろう。


表紙へ戻る 目次へ戻る 前へ戻る