(1) 海洋汚染問題
海洋汚染については船舶に起因する海洋汚染問題が中心となっており,経済水域内における沿岸国の汚染防止管轄権を認めることを前提とした上で,領海,経済水域等における沿岸国,旗国,入港国の法令制定権の範囲,取締り権の態様等について審議が行われてきた。
海洋汚染に関するICNTの条項は,第6会期までの長期にわだる審議の結果として,関係国の利害の微妙なバランスの上にたった規定であると見る参加国は多く,第7会期において実質審議は再開されないであろうとみられていた。
しかし,第7会期直前にフランス沿岸でリベリア籍タンカー「アモコ・カディス号」が座礁し,大きな海洋汚染を引き起こしたこともあって,フランス,米国等から汚染防止に対する沿岸国権限を強化しようとする各種の修正案が出され,さらに規定の形式的な改善案を含めて多数の提案があり,結局,海洋汚染に関する実質審議が活発に行われることとなった。審議は再開第7会期においても継続され,その結果かなりの修正案についてコンセンサスが得られ,全体として条項は固まりつつあるといえるが,なお一部の修正案については主張が対立し,次会期の審議へと持ち越されることとなった。
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