(1) 昭和52年度に行われた主な研究開発


ア 磁気浮上方式鉄道の開発

  在来方式鉄道に代わり騒音,振動が少なく高速性が期待できる磁気浮上方式鉄道の開発が行われている。代表的な二つの技術型式ごとにその特長を生かした用途が考えられており,数年前かちその開発が進められてきたところである。

 (ア) 超電導誘導反発型磁気浮上方式

      超電導電磁石の反発力により車体を軌道上に浮上させ,リニア・シンクロナス・モータにより推進させる方式については,運輸技術審議会の中間答申(46年)以降国鉄が中心となり開発を進めている。52年7月からは宮崎県に敷設した実験線における走行実験を開始し,53年7月には時速337キロの実験に成功している 〔2−6−1図〕。今後の実証,実用化開発を前に,運輸省では53年度補正予算により本型式の総合評価を行うこととしている。

 (イ) 常電動吸引型磁気浮上方式

      運輸省では,常電動電磁石の吸引力により車体を軌道上に浮上させ,リニア・インダクション・モータにより推進させる方式の鉄道の開発を49年度から推進している。49,50年度でフィージビリティ・スタディを行い,51年度からは,3か牢計画で走行実験をふまえたシステムの概念設計とその総合評価を行っている 〔2−6−1図〕
      また,これまで日本航空で開発を進めてきた磁気浮上方式鉄道も本型式と同様のものであるが 〔2−6−1図〕,53年度には基礎実験段階を終えるとしているので,本型式の実用化開発に備える一環として,53年度補正予算によりその総合評価を行うこととしている。

イ 静止気象衛星の研究開発及び打上げ

  世界気象機関(WMO)では,国際学術連合会議(ICSU)と共同して日米等の打上げる5個の静止気象衛星等により全地球的に気象を監視する計画を推進している。我が国ではこのため気象庁が48年度から静止気象衛星の開発を宇宙開発事業団(NASDA)に依頼する一方,地上施設等の整備を行ってきた。NASDAは,52年7月14日米国航空宇宙局(NASA)に依頼して静止気象衛星「ひまわり」の打上げを行った。打上げ後,NASDAが気象庁の協力のもとに衛星各部の機能試験(3) 日航常電導吸引型磁気浮上方式鉄道の概要を行い,52年11月4日から気象庁で「ひまわり」の運用を開始した。
  気象庁では,53年2月6日から観測回数を1日8回とし,同年4月6日から,この観測に加えて台風等の異常気象時には,1時間ごとの臨時観測に対応できる本格運用を開始した。
  53年夏から秋にかけての台風期には延べ約200回の臨時観測を行い,台風監視に威力を発揮した。なお「ひまわり」の機能としては,可視・赤外放射計による昼・夜間の雲分布,海面・雲頂の温度測定の気象観測や,気象資料の収集,配布等がある。

ウ エネルギー資源確保に係る船舶技術の開発

  海洋におけるエネルギー資源の開発・確保に係る船舶技術として,51年度から5か年計画で大深度石油掘削船自動位置保持装置の開発を官民の協力の下に進めており,船舶技術研究所に建設された海洋構造物試験水槽において各種実験を行うこととしている。また,北方資源の輸送に資するため,砕氷商船の氷海における運動性能,砕氷能力等を調査研究する氷海再現水槽の建設を52年度から4か年計画で進めている。

エ 舶用スターリング機関の開発

  エネルギーの節約と石油代替エネルギーの多様化に対応するため,理論的熱効率が高く外燃機関であるスターリング機関の研究圏発を51年度から6か年計画で官民の協力により推進している。

オ 港湾の大水深化・大規模化技術の開発

  港湾の大水深化・大規模化に伴い,波浪条件・地盤条件は格段に厳しくなるため,これに対応して波浪観測網整備,新防波堤構造及び材料,浚渫・埋立工法,深層混合処理工法による超軟弱地盤処理等に係る技術開発を行っている。

カ 地震,火山噴火予知技術の開発

  地震予知については40年度からの第1次計画43年度からの第2次計画に引き続き,49年度からは第3次予知計画を推進してきたが,52年度は同計画に基づき海底地震常時観測システムの研究を行った。また火山の噴火予知については49年度から推進している予知計画に基づく研究を行っている。


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