1 自動車損害賠償責任保険及び政府の保障事業
自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)は,自動車事故(人身)の被害者に対する損害賠償の確保を自的とする強制保険であり,被害者の保険会社に対する直接請求制度,保険金支払,保険経理等につき国の関与を確保するための政府の再保険制度等により社会保障的な保険として国民生活に大きな役割を果たしている。
自賠責保険の保険金支払限度額は,50年7月以来据置いてきたが,最近における自動車事故に関する判決等における損害賠償の水準等を勘案し,53年7月1日に,死亡については1,500万円を2,000万円に,傷害については100万円を120万円に,後遺障害については1,500万円(1級)〜56万円(14級)を2,000万円(1級)〜75万円く14級)にそれぞれ引き上げた。同時に,被害者の当座の資金として責任の有無にかかわちず支払われる仮渡金の金額も,死亡については100万円を160万円に,傷害については25万円〜3万円を40万円〜5万円にそれぞれ引き上げた。
保険加入率は,車検の義務付けられている自動車についてはほぼ100%であるが,原動機付自転車についてはまだかなりの数の保険未加入車(いわゆる無保険車)が見受けられるので,検査対象外経自動車ともあわせて,引き続き,街頭取締り,無保険車監視員保険加入促進PR等により加入率の向上を図ることとしている。
農業協同組合が行う自動車損害賠償責任共済(以下「自賠責共済」という。)に加入している自動車は,自賠責保険に加入しなくても運行の用に供することができる。自賠責共済のしくみは,再保険の対象車種が異なる等若干の点を除き,自賠責保険のそれとほぼ同様である。
さらに,ひき逃げや無保険の自動車による事故の被害者については上述の自賠責保険や自賠責共済による損害のてん補が行われないので,これを救済するために,運輸省は,自動車損害賠償保障事業を行っている。自動車損害賠償保障事業は,再保険事業からの繰入,保険会社に対する賦課金等を財源として加害者に代って損害のてん補を行い,その後加害者のわかっているものについては,加害者に求償する制度で,損害のてん補の限度額その他の運営は,概ね自賠責保険と同様である。
なお,保険金等の支払状況は 〔I−(II)−23表〕のとおりである。
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