3 海洋法会議における海洋汚染防止の問題


  第3次国連海洋法会議では,その主要議題として船舶に起因する汚染問題を中心とした海洋環境の保護について審議が行われており,現在までの8回にわたる審議の結果,距岸200海里の経済水域内における沿岸国の汚染管轄権を認めることは最早確定的情勢となっており,現在ではこれを前提とした上で,領海,経済水域等における沿岸国,入港国,旗国の法令制定権の範囲,取締り権の態様等について審議が行われている。
  その第7会期は53年3〜5月にジュネーブにおいて,また,再開第7会期は同年8〜9月にニューヨークにおいて,それぞれ開催され,第6会期終了後に作成配布された「非公式統合交渉草案(ICNT)」(一応の条約の形式を伝え,本文303条から成る)をベースに審議が進められた。
  第7会期開始前には,それまでの審議状況からICNTの海洋汚染条項は海運国,沿岸国等の利害の微妙なバランスの上に成り立っていると思われることから,第7会期においては実質審議は再開されることなく,このままの形でまとまるのであろうと思われていた。
  しかしながら,会議直前に隼じた大型タンカー「アモコ・カディス号」の海難事故を春景としたフランス等からとくにタンカーの通航に関しての沿岸国権限を強化しようとする各種の修正案が提出され,実質的に多くの条項についての審議が再開されることとなった。
  審議の結果,提出された修正案のうち,大部分について合意又はほぼ合意に達しており,54年3月19日から6週間ジュネーブにおいて開催される第8会期において,非公式統合交渉草案(ICNT)の改訂に盛り込むかどうかについて審議されることになろう。


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