4 空港周辺対策


  上記の発生源対策,空港構造の改良を実施しても,なお騒音の影響が及ぶ地域については,「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(略称:航空機騒音防止法)に基づき空港周辺対策を行っている。

(1) 特定飛行場における対策

  航空機騒音防止法に基づく対策が実施される特定飛行場としては,東京国際,大阪国際,福岡,鹿児島,函館,仙台,松山,宮崎,新潟,大分,熊本,那覇,高知及び広島空港並びに新東京国際空港の15空港がある。このうち,高知及び広島空港は,現在,ジェット機の就航していない空港であり,前述の環境基準上その最終目標を53年に達成することが要求されている。
  これらの特定飛行場については,次のような各種の騒音対策事業が実施されている。
 ア 学校,病院等公共施設の防音工事及び公民館等の共同利用施設の整備に対しては,42年度以降補助を行っている。補助の対象となる施設として,51年度には隣保館を,52年度には図書館を,53年度には精神薄弱者更生施設を加え,毎年制度の充実を図っている。補助対象施設数及び補助額は,51年度は149施設,72億円,52年度は147施設,79億円であり,53年度は158施設,95億円の補助を行うこととしている。
 イ 民家の防音工事に対しては,49年度より助成措置を講じてきており,年々事業の拡大を図り52年度までの累計で20,270世帯に対して293億円の補助を行った。53年度は,8,159世帯に対して148億円の補助を行うこととしている。制度面においても,51年度からは補助率を実質99%に引き上げ,52年度からは補助対象室数を拡げ5人以上の家族がいる家庭の大部分について2室まで防音工事を行っている。さらに,環境基準の最終目標を達成するため,補助対象室数の増加等民家防音工事の内容の充実を図る予定である。
 ウ 空港周辺の騒音激甚区域から移転する者に対しては,移転の補償を行っている。この制度は45年より始まったが,本格的に行われるようになったのは51年度からである。51年度には1,020件,125億円,52年度には922件,148億円の事業を実施した。53年度には718件,180億円の事業を実施することとしている。移転補償も環境基準を達成するために必要な事業であり,54年度以降もかなりの事業量が予想される。
 エ 空港に近接する周辺地域については,移転補償跡地を国が緑地帯その他の緩衝地帯として整備することとしており,52年度には大阪国際空港の周辺地域において4億7,000万円の予算で,53年度には大阪国際空港及び福岡空港の周辺地域において1億8,000万円の予算で緩衝緑地造成事業を進めている。この事業も移転補償の進ちょくに応じ,今後事業量が伸びることが予想される。

(2) 周辺整備空港における対策

  特定飛行場のうち周辺地域が市街化されているため,計画的な整備を促進する必要があると認められる空港については,周辺整備空港に指定し,関係都道府県知事が策定する空港周辺整備計画に基づき,代替地造成事業,再開発事業,緑地等の造成等を実施することとしている。
  周辺整備空港としては,49年3月に大阪国際空港が,51年6月に福岡空港が指定されており,大阪国際空港については,国と大阪府,兵庫県の共同出資で設立された大阪国際空港周辺整備機構が,福岡空港については,国と福岡県,福岡市の共同出資で設立された福岡空港周辺整備機構が実施主体となって,固有事業として再開発事業,代替地造成事業及び共同住宅建設事業を実施しているほか,国からの受託事業として移転補償,緩衝緑地造成事業,その他の事業として民家防音工事助成を実施している。大阪国際空港周辺整備機構及び福岡空港周辺整備機構の予算は, 〔III−21表〕, 〔III−22表〕のとおりである。

  このほか,大阪国際空港については,エアバス導入の際に,種々の航空機騒音対策の強化が図られた。
  すなわち,大気汚染測定ステーションの設置,騒音測定塔の増設,地元地方公共団体による空港周辺地域営業者融資制度の創設等のほか,航空機騒音防止法に基づき府察知事が策定した大阪国際空港周辺整備計画を基礎としつつ,関係住民の意向をも反映した具体的な地区整備計画を策定することとし,新しい街づくりを目指して,52年7月,国,関係府県,関係市,空港周辺整備機構及び学識経験者より構成される「大阪国際空港周辺整備計画調査委員会」を設置し,数次にわたる検討を重ね,同年12月,関係地区における住民説明を行い,現在,住民意見の集約が図られている。これと並行して,このような地区整備計画を実現していくための手法について基本的な検討を行うこととしている。なお,53年度には,これらの手法の一環として,関係地方公共団体が,移転跡地等を利用して公園・緑地等の周辺環境基盤施設を整備する場合にその費用の一部を補助する制度が発走した。

(3) その他の対策

  以上に述べた航空機騒音防止法に基づく対策のほか,52年度に引き続き財団法人航空公害防止協会に補助を行い,テレビ受信障害対策を進めているが,補助対象区域は53年現在,東京国際,大阪国際,福岡,宮崎,鹿児島,那覇空港周辺地域である。
  このほか,騒音監視体制の充実を図るため,現在,東京国際空港周辺に2基,大阪国際空港周辺に工0基,福岡空港周辺に2基の騒音測定塔を設置している。
  以上述べたとおり,空港周辺対策は年々拡充され,その予算も年々大幅な伸びを示し,53年度は前年度比12%増の458億円となっている 〔III−23図〕


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