(3) 国際収支の動向


  53年度の我が国の国際収支(IMF方式)は,総合収支では,22億9,700万ドルの赤字(52年度は121億4,500万ドルの黒字)となり,50年度以来3年ぶりに赤字に転じた。これは,貿易外収支及び移転収支の赤字幅がいずれも拡大したため,経常収支の黒字が118億5,200万ドルと前年度をかなり下回り,一方,長期資本収支の赤字幅も拡大したことによる。特に長期資本収支は162億9・900万ドルの赤字と過去最高の赤字を記録した(前年度に比べ138億5,800万ドルの赤字幅の拡大)。
  貿易収支の輸出は,53年度に入り円高の影響が現われ,我が国の商品の価格面での競争力の低下等による輸出数量の減少が顕著になったことなどにより,前年度比16.3%増にとどまり,前年度の増加率(52年度20.1%増)を下回った。また,輸入は,円高による外国商品の相対価格の低下及び我が国の景気回復傾向が強まり国内需要が増加したことなどにより,伸び率は前年度比21.3%となり,輸出の伸びを5.0ポイント上回った。この結果,貿易収支の黒字は205億3,100万ドル,前年度比約2億ドルの増となり,前年度に比べ黒字幅の伸びは大幅に減少した。
  次に,53年度の貿易外収支は77億7,200万ドルの赤字となり,赤字幅は52年度より18億5,000万ドル拡大(前年度比31・2%増)した。このうち,運輸関係貿易外収支の推移を48年度以降についてみると, 〔1−1−12図〕のとおりであり,収支尻は,海運,航空,旅行の各収支とも,各年度赤字になっている。53年度は前年度に引き続き,特に旅行収支の赤字幅の拡大(対前年度20億2,600万ドル増)が著しく,運輸関係全体では64億5,700万ドルの赤字となり,前年度に比べ赤字幅が拡大(24億3,300万ドル増)した。

  これを,更に,海運,航空,旅行,の各収支についてみると, 〔1−1−13表〕のとおりであった。海運収支は,20億7,900万ドルの赤字となり赤字幅は52年度に比べ3億1,300万ドル拡大した。これは,港湾経費及び用船料はいずれも前年度に比べ赤字幅を縮小したにもかかわらず,貨物運賃の黒字幅が前年度に比べ4億800万ドル縮小したことによる。航空収支は,5億8,100万ドルの赤字となり,52年度に比べ9,600万ドル赤字幅が拡大した。これは,旅客運賃の赤字幅が52年度より1億3,200万ドル拡大したためである。旅行収支は,我が国の所得水準の上昇や,円高による海外旅行の割安感等から日本人海外旅行者数が急増したため,支払は42億8,700万ドルとなり,前年度に比し倍増した。この結果,旅行収支の赤字は37億9,900万ドルとなり,52年度の17億7,300万ドルを20億2,600万ドル上回る支払超過となった。また,旅行収支のうち,観光旅行は23億5,400万ドル,業務その他は14億4,500万ドル,それぞれ赤字となった。

  更に,海運収支について,その構成要素の推移をみると, 〔1−1−14図〕のとおり,49年度ごろより我が国商船隊の構造変化を反映して変化がみられる。すなわち,外国用船が増大したことにより用船料支払が増大したが,一方外国用船を含む我が国商船隊の輸送量が増加し,貨物運賃の収支尻が黒字に転じた。また,我が国商船隊の輸送量の増加に伴い船用油をはじめとする港湾経費の赤字も拡大したが,船用油は価格上昇もあって赤字は大きくなっている。53年度は,我が国商船隊の積取比率の減少のために,前述のとおり貨物運賃収支の黒字が減少した。


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