3 運輸事業の財務状況


  運輸事業の53年度の事業別財務状況は 〔1−5−7表〕のとおりであり,運輸事業の一般的特徴として固定比率が高い。また,鉄道業については,金融費用比率が他の事業と比較してかなり高くなっている。

  更に,この固定比率と並行して,固定資産の資金調達が長期資本にどれくらい依存しているかを示す固定長期適合率を53年度についてみると,運輸事業は概ね100%程度であり,財務の安定性は保たれていると言える。
  また,企業財務の流動性,すなわち企業の支払能力を示す流動比率については,造船業,民営鉄道業,倉庫業が高く,公営交通事業関係は総じて低い水準にある。
  運輸事業の付加価値関係の指標は 〔1−5−8表〕のとおりである。従業員1人当りの付加価値額をみると,外航海運業が全産業平均の約8倍となっているほか,航空運送業,公営鉄道,交通営団もまた大きな値を示している。更に,これらの運輸事業については,従業員1人当りの有形固定資産額である労働装備率も高く,タンカー,航空機,鉄道といった大型輸送機関を使用していることがわかる結果となっている。

  一方,付加価値額に占める人件費の割合すなわち労働分配率は,全産業平均は約58%である。運送業については,外航海運業が約19%,航空運送業が約44%となっている。鉄道業は、公営鉄道が40%台,大手民鉄,大都市中央民鉄が50%台であるのに対して,地方中小民鉄は80%台,国鉄は100%台となっている。


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