2 労働力の現状


  総理府の労働力調査報告によれば,53年平均の15歳以上人口は8,726万人(前年比1.1%増),労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は5,532万人(前年比1.5%増),労働力人口比率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は63.4%で,前年に比べ0.2ポイント上昇した。
  就業者は5,408万人で前年に比べ66万人(1.2%)増加した。別にみると男子は3,325万人で,前年に比べ16万人(05%)の小幅な増加にとどまったのに対し,女子は2,083万人で,前年に比べ50万人(25%)と大幅に増加しており,増加就業者の7割強と,大半を女子が占めている。
  就業者を産業別にみると,農林業就業者は589万人で,31年以後減少していたが,53年は前年に比べ増減がなかった。非農林業就業者は4,819万人で,前年に比べ67万人(1.4%)増加したが,製造業は1,326万人と前年より14万人(1.0%)減少し,49年以後減少を続けている。運輸・通信業は342万人(男子304万人,女子39万人)とほぼ前年並みであり,長期的にも横ばい傾向が続いている 〔1−5−13図〕。一方,運輸・通信業務(職業)に従事している者は243万人(男子228万人,女子15万人)であり,これは全就労者数の4.5%にあたる。

  女子の就労については,運輸・通信業(産業)では11.4%,運輸・通信業務(職業)では6.2%であり,全就労者に占める女子の割合38.5%からみれば低い。
  就業者のうち規模30人以上の事務所の常用労働者数の動向を労働省毎月勤労統計調査によりみてみると,調査産業計,製造業ともに石油危機後引き続き減少傾向にある。運輸省所管業種の動きをみると不況下にある造船業では50年初から雇用調整が進んできている 〔1−5−14図〕。運輸業全体では,50年以降調査産業計とほぼ似た動きを示している。道路貨物運送業では53年秋まで一貫して長期的減少傾向にあったものが,53年末から増加に転じている。道路旅客運送業では50年にやや増加したものの,51年にはやや減少しその後は横ばいである。

  労働者数の動きを入・離職率でみると 〔1−5−15図〕,運輸省所管業種では旅館その他の宿泊所を除き平均より低位にあるが,これを53年の転職希望率,追加就業希望率でみると,運輸・通信業(産業)における転職希望率は全産業の平均4.8%より高く5.8%となっており(製造業では60%),追加就業希望率でも全産業の平均3.7%より低く3.2%となっている。また,運輸・通信業務(職業)における転職希望率は全産業の平均4.8%よりかなり高い7.4%であり,運輸・通信業,そのうちでも現場部門での労働者の転職希望が相対的に高いことが推測される。

  我が国における労働力問題の最大の問題は,労働力の高齢化である。運輸業においても高齢化の波が押し寄せてきており, 〔1−5−16図〕のとおりとなっている。運輸業においては,高齢化の程度が他産業を上回っており,こうした企業内労働力の高齢化傾向は,企業の経営面においても少なからぬ影響を及ぼすものと考えられる。今後はこのような状況に適切に対応すべく,定年延長等により高年齢労働者の能力の活用を図るとともに,採用・配置・昇進等に係る慣行・制度や年功的な賃金体系等について検討をしていく必要がある。


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