1 国内における石油製品の輸送状況


  我が国における石油製品の輸送量は53年度331百万トン,64,645百万トンキロとそれぞれ国内総輸送量の6.1%,15.8%を占めており,我が国石油消費量の増大とともに増加し,45年度に比し輸送トン数はおよそ1.3倍となった。
  この急激に増大した石油製品の輸送は,陸上においては,中味輸送はタンク車,タンクローリー,パイプラインにより,容器詰品輸送は,貨車,トラックにより,また,海上輸送では,中味輸送は内航タンカー,バージにより,容器詰品輸送は,汽船,はしけにより行われており,これらがそれぞれの異なった特性を発揮し,機能別に補完し合って石油輸送が行われている。
  例えば石油化学コンビナートに対して,製油所からナフサを継続的に大量輸送する場合には,パイプラインが最も優れた性能を発揮し,大量かつ長距離輸送には内航タンカー,内陸部の中距離輸送にはタンク車が,末端輸送にはタンクローリーがそれぞれ弾力性と機動性のある輸送機能を発揮している。
  石油製品の輸送を海運(内航タンカー),鉄道,自動車と大別してその推移をみるとトンキロベースにおいて内航タンカーによるものが圧倒的なシェアを占め,かつ拡大基調にある。一方,トンベースでは自動車,内航が二分し,鉄道はほぼ6〜7%のシェアを確保している 〔2−3−4表〕。また石油製品の輸送分担を輸送距離の面からみると近距離輸送を自動車が,遠距離輸送を内航タンカーが,内陸中距離輸送を鉄道がそれぞれ分担している 〔2−3−5図〕

(1) 内航タンカー

  我が国において石油製品の輸送に占める内航タンカーのシェアが大きい理由としては,我が国が四面を海にかこまれ,かつ,南北に細長い列島であるという地理的条件からくる必然的な結果として,石油精製会社の主な製油所,輸入基地,販売会社の配給基地たる主要油槽所,大口需要家の工場,発電所等が,概ね臨海地区に所在していることがあげられる。この内航タンカーの占める圧倒的シエアは現在の陸上輸送手段とし自動車,鉄道のかかえる条件,すなわち既に飽和状態に達している道路事情,過密な都市部における危険品輸送に対する安全,環境からくる地域住民感情,鉄道におけるタンク車の大型化への制約等の問題を考えると,今後とも当分の間内航タンカーに依存するウエイトは上昇することはあっても,著しく低下するとは考えられない。

(2) 自動車

  自動車による53年度の輸送量は168百万トンとなっており,石油製品輸送トン数の過半を占めているが,自動車(主としてタンクローリー)の輸送分担率が大きい理由は,末端販売者(給油所)知需要家までの最末端輸送を最終的にほとんど分担するという輸送体系の構造に基づくものである。

(3) 鉄道

  石油輸送量に占める鉄道による輸送量(トン数)の割合は約5.8%であり,平均約150qの中距離輸送を主として分担している。
  鉄道輸送(国鉄)による主要物資の中で石油のシェア(トシ数ベース)は約14.5%を占め,49年度以降石灰石に次ぎ2位にランクされており,最も安定的な大宗貨物の位置を占めていると言えよう。
  次に石油製品に対する需要の季節波動をみると,石油製品,なかでも灯油をはじめとした燃料油消費量の季節波動が高い 〔2−3−6図〕

  一方,石油の内陸貯蔵能力は,石油危機以後設備投資の減退,環境面の規制強化等により新設増強は行われていないため,多くの石油内陸基地は流通基地としての機能は果たしているが,備蓄機能はほとんど持っていないと言うことができよう。
  従って,輸送が季節波動を調整する役割を担ってきているため,冬場需要期にはすべての輸送力を集中して対応する必要があるので,ストライキ,気象条件,その他の原因で輸送渋滞が発生したような場合には,直ちにこれらに対応することが困難であり,多くの場合,供給の不安定を招く恐れもある。
  一面,このような輸送機関の使用実態は,輸送機関を効率的に使用できず,年間稼動率の低下をもたらす結果となっている。従って,石油製品の内陸貯蔵能力の増強により,輸送の平準化により,輸送の効率化と供給の安定化を図ることも検討する必要がある。


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