2 運輸技術の開発による洋上石油備蓄体制の整備


  我が国は,石油輸入の8割弱を政治情勢の不安定な中東諸国からの輸入に依存しており,しかも当面,石油への依存が高いレベルで推移せざるを得ない見通しにある。これに対して,石炭等他の資源確保が我が国以上に進んでいる欧米諸国には,すでに90日を大幅に上回った石油備蓄を行っている国たが数多くあり,1978年3月でOECDヨーロッパ諸国は,平均約110日の備蓄を保有している 〔2−3−9図〕

  一方,我が国の石油備蓄は,備蓄計画に従ってすでに101日分(10月末現在)を達成しているが,欧米諸国に比較して備蓄絶対量では多いものの,備蓄日数では下回っており,備蓄積増しは我が国のエネルギー対策上極めて重要な課題となっている。
  このように膨大な貯油施設需要に対して,人口密度が高く国土面積の狭い我が国においては,輸入石油の備蓄基地について,陸上の臨海部における立地を進めるとともに,従来の地上タンクとは異なる新しい洋上石油備蓄システムの開発による海上への立地の検討が進められている。
  洋上石油備蓄システムは,その主要な部分が海上という特殊な環境下におかれ,かつ,長期にわたって石油備蓄機能を果たすものであるため,その安全防災対策には万全を期する必要があるが,タンク船単体はもちろんのこと,浅海域の海洋利用,陸海の複合方式の採用といったトータルシステムそれ自体が世界でも類例のない新しい方式であるため,安全性,環境保全に関する技術上,立地上の基準等について十分整備されていない状態にあったと言える。
  運輸省は,この新方式の石油備蓄システムの技術基準等の整備のための安全指針を早急に確立する必要性から,52年10月27日に運輸技術審議会に諮問(第10号)を行い,53年4月9日に「浮遊式海洋構造物(貯蔵船方式)による石油備蓄システムの安全指針」に関する答申を受けた。この安全指針は,超大型タンカーの建造,運航技術及び港湾建設技術並びに荒天時対策,出入港船舶対策等の保安防災対策等,これまでに蓄積された技術と経験を踏まえて作成されたものであり,今後の海洋石油備蓄プロジェクトを運輸省が推進していく上で,重要な役割を果たすものと考えられる。
  運輸省はこの答申を受けて,危険物を取扱う船舶としての安全確保の観点から「大型の石油貯蔵船の船舶安全法上の取扱いについて(船舶局長通達)」を53年11月28日に通達するとともに,当該石油備蓄基地に係る港湾の施設の技術上の基準及びその運用に当っての重要事項の調査審議を行うために,学識経験者及び職員からなる「貯蔵船方式による石油備蓄基地(港湾の施設)に関する技術調査委員会」を53年8月中発足させた。また,海上保安庁においても,漏油,火災,爆発事故の未然防止及び拡大防止体制等の安全防災対策確立の見地から必要な指導,助言を行っている。


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