3 タンカー石油備蓄の実施


  恒久タンクによる石油の国家備蓄は,安全確保のために広大な空間と大規模な設備を必要とし,建設にはかなりの日時を要する。このため,恒久タンクによる備蓄体制が整うまでの暫定措置として,船腹過剰状態にあるタンカーの活用による備蓄が計画された。
  運輸省は52年11月に,具体的なタンカー備蓄の実施方策を検討するため,通商産業省とともにタンカー備蓄合同委員会を設置し,備蓄船の選定基準,備蓄方式,錨泊候補地点の選定,安全防災管理体制の整備等の所要の作業を進めた。ついで12月には,石油開発公団(53年6月に石油公団に改称),海運業界,石油業界により,タンカー備蓄実施委員会が設置され,合同委員会の作業を補完した。
  合同委員会,実施委員会の検討により,当面錨泊方式及び漂泊方式の二方式を採用することとし,それぞれの方式についての適地の選定に係る調査と広報活動を行うため,53年2月に海運業界,石油業界により(財)日本タンカー石油備蓄協会が設立された。同協会等の調査・検討をふまえ,53年7月4日の総合エネルギー対策推進閣僚会議において,恒久タンクによる備蓄体制が整うまでの暫定措置として,遊休タンカーの活用による500万Klの備蓄を行うことに決定した。
  53年秋から長崎県橘湾において10隻(122万総トン)のタンカーが錨泊方式により,また,小笠原西方水域において同じく10隻(118万総トン)のタンカーが漂泊方式により,計500万Klの石油備蓄を開始した 〔2−3−10図〕
  運輸省としては,これら原油タンカー備蓄に伴う安全防災対策については,専門家による安全対策に関する検討の結果をふまえて,現行法規の的確な遵守に加え,防災機関との連絡協力体制の確保,備蓄タンカーの集団管理体制の維持,防災資機材の配備について,石油公団,船舶所有者等の関係者を十分指導し,安全の確保,災害の防止に万全を期している。


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