2 エネルギー開発のための海洋基礎調査及び技術開発


  海洋の開発,利用を進めていくには,多くの点で未解明な海洋の実態を明らかにするとともに,その厳しい自然環境を克服しうる技術力を蓄積していかなければならない。このような点で運輸省が従来から実施している海洋の基礎調査及び海洋の開発利用のための技術開発が,海洋のエネルギー資源の開発利用の面においても重要な役割を果たすものと言える。海洋調査の面では,多くの海洋調査船及び調査観測所,観測ブイ等を配備し,海洋における気象,海象情報を蓄積するとともに,海洋資料センター(海上保安庁)は,海洋開発の基礎となる海潮流,潮汐,水温等の海洋データを元的に収集,処理,解析,保管して一般に提供している。
  海洋における技術の開発は,海底の石油及び天然ガスの開発とともに大きく前進したといえる。1970年から77年に至る8年間に世界で発見された主要油田のうち77%は海底油田であり,1976年の海洋からの石油生産量は全体の17%までに達している。
  今後とも海洋資源に対する依存度は大きくなると考えられるが,海底石油資源の開発は近年ますます大水深海域に進んでおり,探査,掘削船に対して高い性能が要求されている。特に掘削船の位置保持は,大水深では脚支持方式やアンカー係留ができないため自動位置保持装置の開発が進められている。また,沖合海域での本格的な生産に備えて原油パイプライン輸送技術,海上貯蔵荷役システム等の開発も必要となろう。同時に,石油港湾等の海上災害の防止対策をも十分考慮に入れた開発が必要である。
  他方,海洋エネルギーは,エネルギー密度が非常に小さいために,これを利用可能なエネルギーに変換するための装置が大規模とならざるをえない。このため,このような装置を沿岸域や沖合海域に配置するための大型海洋構造物の建造技術及びその係留技術,荒天時の安全確保の技術,発生したエネルギーを陸上に運ぶ技術等の開発を進める必要がある。
  なお,我が国は世界に先がけて波エネルギーを灯浮標に実用化しているが,これは,海上保安庁が防衛庁等と協力し,小型ブイ用電源として開発したものであり,無保守・省力化・省エネルギーを目的とし,比較的波浪及び船舶の輻輳する航跡波の多い所で保守条件の厳しい場所に設置されている。波エネルギーの利用については,更に高度のエネルギーの回収技術を確立することによって,このような装置をこれまで港湾等に設けられてきた防波堤や消波装置と一体となったシステムとして有効に利用していくことも期待される。今後は,これらについての積極的かつ組織的な研究を行わなければならない。
  このため運輸省では,船舶技術につき,
 @ 半潜水型船舶の技術開発
 A 大深度石油掘削船の自動位置保持装置の技術開発
 等を,土木技術につき,
 @ 大水深における施工検査及び海底探査技術の開発に関する研究
 A 大水深重力式構造物の構造解析に関する研究
 等を進めているところである。


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