4 労働問題
国鉄における労働組合の組織状況は 〔I−(I)−8表〕のとおりであり,全職員約42万4,000人のうち,組合加入者は36万5,000人である。
54年春闘に際しては,国労,動労及び全動労は,大幅賃上げ(国労及び全動労は組合員1人平均月額2万2,000円,動労は35才の組合員について,1人平均月額2万3,400円),地方交通線廃止反対,雇用・年金等の制度政策要求等を掲げ,争議行為を行った。これに対し,当局側は,4月20日に,組合員1人平均3,423円の有額回答を行ったが,組合側が不満としたため,同月21に国鉄当局及び鉄労からの申請に基づき公共企業体等労働委員会(公労委)の調停に係属した。
組合側の計画していた4月25日からの72時間ストを回避すべく,引き続き折衝が重ねられたが,調停がまとまらないまま組合側はストに突入した。25日午前9時すぎに調停委員長見解が提示されたが,労使委員の同意が得られず,調停は不調となり,仲裁移行が決定され,ストは同日午後には収拾された。
運輸大臣は,今回のストにさきだって,国鉄関係労働組合に対し,国鉄の危機的現状をふまえ,国民感情を配慮した良識ある行動を望むこと,ベースアップについて有額回答を行いうるよう努力すること,労使の共通認識を得るため国鉄監査委員会の委員の一人として労組側の代表を任命する用意のあること等を表明していた。
また,運輸大臣は6月1日に,54年春闘に係るスト処分について,労使相協力し,全力を上げて国鉄再建に取り組む誠意と態勢とを前提として,凍結するよう,国鉄総裁に助言する旨の発言を行った。
賃金問題についてはその後,5月24日に調停委貫長見解どおり,2.35%+1,800円,組合員1人平均6,027円の仲裁裁定が下され,6月1日の閣議でその完全実施が決定された。
54年春闘による影響は,旅客列車9,400本,貨物列車2,600本の運休となり,影響人員は約800万人に及んだ。
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