1 技術開発の動向
諸般の厳しい環境の中で鉄道が本来の役割を果たしていくためには,安全性の確保はもとより,輸送サービスの向上を図るとともに,省力化,能率化等により輸送コストを低減することが必要である。
また,地域社会との調和を保つため環境保全にも十分配慮することが必要である。
さらには,最近のエネルギー事情に鑑み,本来省エネルギー型の交通機関である鉄道においてもエネルギー節減が要請されつつある。
これらに対処するためには,技術開発の受け持つ役割は大きく,計画的,効率的に推進していく必要がある。
以上の観点から国鉄では,技術開発長期計画に基づき,総合的な効果の高いものに重点を置き,緊急を要するものについては早期に実効をあげるよう進めるとともに,長期の開発期間を要するものについては所要の時期に合わせて計画的に進めていくこととしているが,53年度は下記の項目を重点事項として実施した。
(1) 安全性の確保と輸送信頼性の向上
@走行安定性向上の研究,A地震対策の研究,B車両火災対策の研究,C列車防護と脱線復旧迅速化の研究,D架線・パンタグラフ関連事故防止の研究,E雪害対策の研究,F車両故障防止の研究,G電気設備信頼度向上の研究
(2) 運営管理の近代化
@フロント業務機械化・自動化の研究,Aヤード作業自動化の研究,B運転計画業務近代化の研究,C車両検修作業における自動化・機械化の研究,D新しい新幹線車両の開発,E軌道構造の強化と合理的施工法の研究,F電気設備改良と保守量軽減の研究,G通信方式近代化の研究,H安全かつ経済的な工事施工法の研究,I省エネルギーの研究
(3) 環境保全
@騒音・振動防止対策の研究,A電波雑音防止の研究
(4) 磁気浮上方式鉄道
磁気浮上方式鉄道に関する基礎研究及び宮崎実験線での実験
また,鉄道車両,信号保安装置等の製造業界では,国鉄及び民鉄が行う技術開発に協力するとともに,独自に磁気浮上方式鉄道,新交通システム等についての要素技術開発を行っている。
一方,運輸省で砥民間企業における技術開発を促進するため,「企業合理化促進法」に基づき,鉄道技術の高度化に資する等の課題を公示し,これに見合うものに対して掛学技術試験研究補助金を交付しており,53年度は輸出用の大軸重で高速運転を行う動力車に最適な軸受仕様を研究する「大軸重・高速鉄道車両用転がり軸受に関する試験研究」に対し交付した。
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