3 海運企業に関連する施策


  53年度に実施された政府の施策の中で,タンカーによる石油備蓄と仕組船の買戻しは,それぞれエネルギー対策,国際収支対策を第一義的な目的としているものの,海運企業の経営にも大きな影響を及ぼしたものとして特記されよう。

(1) タンカーによる石油備蓄

  タンカーによる石油備蓄が53年秋から始まった。それに用いられるタンカーは10万総トンクラスのタンカー20隻,合計240万総トンであるが,これはすべて日本の海運企業が保有するものであり,タンカーによる石油備蓄は,長期の不況下で懸念されていたタンカーの係船を回避できたこと,フリー船の吸収によりタンカーの運賃市況に好影響を与えたこと等の面でタンカー部門の経営上も大きな効果があったとみられる。

(2) 仕組船の買戻し

  国際収支の均衡を回復し,また,急激な円高傾向に対処することを目的として重要物資の緊急輸入を促進するため,53年4月21日の経済対策閣僚会議で日本輸出入銀行の緊急輸入外貨貸付制度が活用されることとなり,外航海運の仕組船の買戻しについても,この制度が適用されることとなった。
  これにより買戻された仕組船は50隻,約204万総トンに達し,購入価額は約7億9,000万ドルで,いわゆるドル減らしにも大きく寄与したが,これは仕組船の建造資金の大半がユーロダラーであり,その金利が最近上昇し,支払用船料の増大を通じ企業経営に少なからざる影響を与えていたこと,余剰船員の有効活用の方策として外国人船員を日本人船員に配乗換えすることが望ましかったこと等,海運企業の経営上も仕組船の買戻しにメリットがあったことが原因と考えられる。
  海運政策上も仕組船の買戻しは日本船の増強及び日本人船員の職域拡大相応の効果があったと評価できる。


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