4 近海海運問題


  我が国の近海海運は,約700隻,275万総トン(500万重量トン)の商船隊から成り立っているが,相手国の港湾事情から船舶の大型化に限界がある等合理化,コスト低減が容易でなく,国際競争力の喪失という現在外航海運が抱えている構造的な問題がより顕在化している分野である。加えて,近海海運についてはその大宗貨物である南洋材の輸送需要が,我が国の住宅建築の動向や木材市況に左右され変動が激しいため,しばしば船腹需給の不均衡が発生し,ひいては運賃市況が極めて不安定な分野となっている。
  50年に南洋材の輸入量が大幅に減少して以来,近海船市況は回復しておらず,更にそれまで1ドル=300円の固定レートで円価に換算されていたドル建て運賃が52年7月以降,その時々の為替市況レートで換算されることとなったため,運賃収入及び用船料収入は円相場高騰の影響を直接受けることとなった。その結果,投入船腹量の抑制措置の効果も減殺され,我が国近海海運の経営環境は極めて困難なものとなっている。
  近海海運業の不振は,使用船舶の船主(貸渡業者)にも大きな影響を与えるため,近海船主は,50年12月中小企業等協同組合法に基づく「日本近海船主協同組合」を設立し,経営基盤の改善に努めている。
  近海海運業の不況対策として,従来より政府関係金融機関からの事業者に対する融資,近海船の建造の原則的禁止措置等の施策を講じてきたほか,52年3月からは事業転換事業者に対する中小企業事業転換対策臨時措置法に基づく助成措置,53年2月からは,円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法に基づく助成措置がとられている。
  更に,53年度以降は,近海海運業の過剰船腹を解消しつつ国際競争力の保持を図るため,日本近海船主協同組合の活動に基づき解撤(輸出)建造方式により船舶整備公団との共有船の建造を行うこととし,船舶の合理化近代化に努めている。


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