1 国連貿易開発会議第5回総会


  経済貿易に関する南北問題を討議するため1964年に設けられた国連貿易開発会議(UNCTAD)の第5回総会が,1979年5月7日から6月3日までマニラにおいて開催された。この総会は,1970年代の発展途上国の開発の実績を踏まえつつ,1980年代の開発計画の方向を探るものであった。
  今回の会議における海運の主要議題は,@1974年に採択された定期船同盟憲章条約の早期発効,A発展途上国の商船隊の整備であった。

@ 定期船同盟憲章条約の早期発効

  定期船同盟の運営の新しい秩序を定めた定期船同盟憲章条約の早期発効問題については,多くの国が条約に加入することを表明したため,早期実施に向けての決議が全会一致で採択された。なお,我が国からは,我が国も本条約の趣旨に賛成しており,これに加入するため,国内法上いかなる形で実施に移すかについての検討が現在政府部内で進められている旨説明した。

A 発展途上国の商船隊の整備

  発展途上国の不定期船海運への参加問題は,今回の総会で初めて具体的に取り上げられることとなった。発展途上国は,より輸送量の多い不定期船の分野においても,海運への衡平な参加の権利が認められるべきであるとし,かつ,船舶の国別積取シェアに近い概念を先進国が認めるよう主張した。このような要求に対し,先進国側は不定期船の分野は,市場原則に基づく競争が行われているので,政府がシェア等について関与することは不適当であり,また非現実的であると主張した。結局この問題については,発展途上国海運が不定期船分野においても衡平に参加すべき旨の決議案が先進国側の反対のまま採択されたため,今後この問題をいかに取り扱うかについての対応策の検討が必要になるものと思われる。


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