3 発展途上国政府による海運への介入
一部の発展途上国が採用する国旗差別政策(自国海運の振興,国際収支の改善等を図るために実施している輸送貨物の定割合の自国船積みの法的義務付け,自国の利益を図るために恣意的に行う定期船同盟の認可,外国船社による自国内における集貨活動の制限,港湾における外国船舶と自国船舶との差別的取扱い等の措置をいう。)は,多くの先進海運国がとっている海運自由の原則に基づく政策(政府は可能な限り民間の海運取引に介入しない政策)との問で依然として摩擦を生じており,問題解決を図り得ない場合も多い。
我が国の海運もこのような発展途上国の政策の影響を受けて,その積取比率が大きく減少した例がみられる。例えば,南米西岸航路においては自国船優先政策導入以前の1965年に97%ありた日本船の積取比率が現在では25%に減じており,中米航路においても日本船の積取比率は1968年の84%から現在では39%になっている。
このような発展途上国との間の問題解決に当たっては,日本船社はまず商業的に協議を行う等の手段により対応してきているが,それに限界がある場合には,発展途上国と我が国海運の利益調整のため,定期船同盟憲章条約の内容を勘案しつつ二国間協議等を含めた政府ベースでの問題解決方法を進めていくことが適当な場合も生じてくると思われる。かかる意味において,定期船同盟憲章条約の発効が,この問題を解決するための手掛りとして期待されるものである。
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