4 東欧圏海運問題


  東欧圏諸国(とりわけソ連)は,近年その商船隊を急速に拡充し,自国関係航路のみならず,日本/北米西岸航路その他の三国間航路へ進出して活発な海運活動を行っている。
  これら東欧圏海運は,先進海運諸国との経済体制の差異を利用し,低運賃及び特殊な運賃体系の採用等の手段によって活発な盟外船活動を行うことが特徴であり,その背景にはこれら東欧圏諸国の慢性的な外貨不足等があるといわれている。
  このような東欧圏海運の活動に対しては,商業的基盤に立つ先進海運国海運が競争してゆくことは困難であり,このまま放置すれば,既存の定期航路秩序自体が脅かされる危険があると考えられている。
  このため,欧米諸国では,アメリカの「国営船社規制法」の制定,EC諸国の「モニタリング・システム」と称する監視制度の設定等,様々な対策が講じられている。我が国としても,このような事態に対処するため,54年度には,これら東欧圏諸国を中心とする盟外船活動の実態調査を行っており,今後はその結果を踏まえて,適切な対策を講ずることが必要と考えられる。
  日ソ間におけるもう一つの大きな問題としては,シベリア・ランド・ブリッジ(SLB)輸送問題がある。シベリア・ランド・ブリッジ輸送とは,極東/欧州・中東間のコンテナ輸送をシベリア鉄道経由で行うもので,運賃が安いことから,現在,日本/欧州間のコンテナ輸送の4分の1近くを占めるに至っている。この輸送方法は,輸送手段の多様化というメリットを有するが,その反面,特定の国(ソ連)の内陸輸送に依存せざるを得ないという問題を含んでおり,今後は,この輸送に過度に依存して我が国の輸送の安全保障上問題が生じることのないよう配慮する必要があろう。


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